74.星勝さんのアレンジは、メンバーを大人なプレイへ導いてくれた

――『DANCE NUMBER ONE』の最後の曲は『天使のプレゼント』です。

 切なくていい曲ですよね。本当にフセマンが作ったのか? と疑いたくなるくらいに複雑でおしゃれな曲です。ダンスナンバーではないけれど、ディスコのチークタイムをイメージして収録することにしたんだと思います。この曲も星勝さんのアレンジです。「せっかくだから2曲お願いしよう」とディレクターの大友さんが提案したはず。星勝さんのアレンジはメンバーを大事にした非常に緻密な作りで、それまでにない大人なプレイへとメンバーを導いてくれた。その手腕は本当に素晴らしかったです。他人を入れることにあまり積極的ではなかったメンバーも、そこには脱帽だったんじゃないかな。自分たちのアレンジでは辿り着けなかった素敵な曲になったし、これでさらに新しい扉を開けられたと、みんな感じていたと思います。

 タイトルでもある〔天使のプレゼント〕というフレーズや歌詞が出来上がった経緯は思い出せないですけど、多分、曲を聴いてすぐにイメージが浮かんだんでしょうね。当時の自分にも、「好きな人とずっと一緒にいたい」という想いがあったんじゃないかな。

――久々にアルバム『DANCE NUMBER ONE』を聴いて、どんなことを思いましたか。

 『YOUNG ANIMAL NO.1』とか『してきちゃいなよ』のようなアッパーなダンスチューンだけを集結させられたらよかったんですけど、当時の僕らにはまだコンセプトにぴったり沿うような楽曲を作ってきっちり仕上げていく技量も時間もなくて、結果的にできてきた曲を優先したアルバム作りになってしまった。でもその正直さ、素直さみたいなものが『DANCE NUMBER ONE』の青春っぽさに繋がっているのかもしれないですね。

――当時、私は毎月取材させていただいていましたが、「午後1時にスタジオに入って朝5時に帰宅するような生活」と話してました。取材のあとに編集者と「浜崎さん、今月も疲れてたねー」と話していたのを思い出します。当時のことは、どれくらい憶えていますか。

 記憶があるのは6月の“進め!進め!進め!”ツアーくらいまで。9月の“DANCE ANIMAL”ツアーの記憶は全くないです。確か渋谷クラブクアトロだった気がするけど、12月の”強引 MY WAY“ツアー最終日、アンコール前の楽屋で立ち上がれないくらいヘトヘトになっていたのは、すごくよく憶えてます(苦笑)。

 そういえばこの間、『DANCE NUMBER ONE』のためにメンバーが作ってきた曲のデモテープをまとめたと思われるカセットテープが出てきたんですよ。じゅんちゃん(浜谷淳子さん)の曲が3曲くらいあったり、『ワザワザイチャイチャ』の丸山さんの曲がその段階で最終形に近い仕上がりだったり、星勝さんがアレンジで手を加えてくれたと思っていた『天使のプレゼント』の伏島曲が、最初の時点でほぼすべての要素を持ち合わせていたり・・。みんな、頑張って曲を作っているし、ちゃんといい曲を選んでいるなーと感心しました。セッションしながらみんなで曲を作ることはなくなったけど、『DANCE NUMBER ONE』まではメンバー個人のクリエイターとしての成長が確かにあったんですね。

(1992年、ロッキングオン・ジャパン用に撮影されたもの。カメラマンは小暮徹さん。)


インタビュー : 木村由理江