37.意味がないようで実はある『あれの歌』

――アルバムのタイトルの『続いてゆくのかな』はどんな意図で?

 提案したのは僕です。ぱっと閃いたんですよ。提案した時は「当然、続くでしょう」という自信がありましたけど、“かな”と斜に構えてる感じがおもしろいんじゃないの? と。ひょっとしたら「続いていくのかな・・」という不安みたいなものも、心のどこかにあったのかもしれませんね。アルバムはいろんな音楽雑誌で紹介されましたけど、「ミュージックマガジン」のレコード評に取り上げられていると知った時には、嬉しかったです。「ミュージックマガジン」に取り上げられるのはちょっとしたステータスでしたから。でも本屋で立ち読みしたら“宗教観みたいなのが云々”とめちゃくちゃ酷評されていて・・。結構ショックでした(笑)。

――アルバム『続いていくのかな』の1曲目は、「イカ天」4週目の『あれの歌』です。 

意味深なタイトルのこの曲を披露したのは、『我思うゆえに我あり』、『ちゅるちゅるベイビー』、『幸せであるように』のあと。「FLYING KIDSにはまだこんな玉があったんだ!」と「イカ天」を観ていた人たちはみんな驚いたと思います。もとになったのは僕の中にあった“季節がどんなに巡っても、みんなあれについて考えている”というイメージですね。集合時間前にひとりだけ先にスタジオに行って、ロビーで歌詞ノートを広げてバーッと歌詞を書き、それに合わせてセッションしながら曲を作って行ったはず。セックス的なモチーフも8ビートのファンクも、どちらもプリンスの影響です。グランドイカ天キングのご褒美で一度、萩原健太さんプロデュース&アレンジで録音しましたけど、新たなアレンジで録音し直しました。

冒頭から何度か出てくる“ウキキキウキキ”という叫びは、「ここにこんな音が入ったらおもしろいかも」と思って瞬発的に出したんじゃないかな。意味がないようで実はある、というふうにしたかったんですよ。その辺のバランスはすごく考えました。〔みんなあれについて考えてる〕というフレーズに込めた意味を必要以上の説明していないのも、そこを意識したから。『幸せであるように』や『我思うゆえに我あり』もそうですけど、心のスイッチみたいなものがちょっと入ればそれで十分、あとはグルーヴに身を任せてください、という曲ですね。

――初期のFLYING KIDSの作品全体に言えることですが、この曲もじゅんちゃんの存在感がすごいですね。

 じゅんちゃんのパートは、ハモリも含めすべてじゅんちゃん自身が考えているんですよ。音感がいいしセンスも独特だから、理屈じゃなくて自分の声がハマるところを微妙に見つけて載せている。全部が採用にはなるわけではなかったけど、今になってすごいなーと思います。

この曲は当時映画館で流れたぴあのCMにも使われて、僕らが出演もしたそのCMを映画館で観た時は、自分たちの歌が映画館で流れた! と結構感動しました。ちょっとした振り付けがあるんですが、ライブではそれをお客さんが一緒にやってくれて、毎回非常に盛り上がる曲でした。

(ぴあシネマクラブのコマーシャルの撮影時の時、スタッフの方々との記念撮影。左はヘアメイクを担当してくれたASA-CANG。当時、ヘアメイクと兼業で東京スカパラダイスオーケストラをやっていました。)


インタビュー : 木村由理江