125. 『Bridge』には素直な当時の想いが反映されている
――7曲目の『Bridge』は浜崎さんの作詞・作曲です。曲調といい歌詞の内容といいうっとりするくらいロマンチックです。
こういう素直な曲は考え込まずに作れちゃっていた時期だったので、作っていた時のことはあまり憶えてないですね。初期の頃は、こういうシンプルでストレートな楽曲はおもしろくもなくてダメだと思っていたし、作る気にもならなかった。でもアルバム『COMMUNICATION』の頃から“もっとシンプルでストレートなメッセージの楽曲を”とスタッフサイドから繰り返し言われるようになり・・。何も考えず曲を作るとつい複雑なテーマ性や世界観を取り上げる傾向にあった僕も、意識してマニアックなものではなくラブソング主体のポップな楽曲を作るようになっていったし、それが『風の吹き抜ける場所へ』以降のFLYING KIDSの新たな作品群につながっていったわけです。それをさらに進めたのがこの『Bridge』でしょうね。メンバー全員がポップでシンプルな楽曲をよしとしていたわけではなかったけど、僕は“恥ずかしいくらいダイレクトに歌う”ということを、FLYING KIDSの一つのチャレンジとしてこの曲で提案しようとしたんじゃないかな。僕にとってFLYING KIDSに曲を書くことは常に新たな提案でしたし、そのためにも誰もが認めるいい曲を作らないとみんなに申し訳ないという気持ちがありました。アレンジも素晴らしいし、FLYING KIDSのポップスのひとつ完成形ではあると思います。
――〔I love you I need you I want you Kiss me baby〕、〔Yes 君が好き〕といった歌詞は、どんな想いで書いていたのでしょう?
メロディと一緒に出てきたんだと思います。仮歌を歌いながら「あとでもっと練らなきゃなー」と思ってはいたんですけど、「これ以上の歌詞は考えられない」とそのまま定着したんじゃないかな。まあいろいろありますけど・・、当時、シンプルにこういう気持ちで人を愛していたんだと思います(照笑)。だから作れた。それが真実だと思います。今はこんなにストレートには・・。いや、逆に今、作れるかもしれないですね。
――歌はどうですか。
ちゃんと歌えてるし、すごく素直に想いを表現できていると思います。ただまっすぐすぎて聴いてて恥ずかしいですけどね、やっぱり(笑)。
実はこの曲、全然聴いてなかったんですよ。僕がレギュラー番組を持っているラジオ高崎のディレクターの堀口夏希さんが、毎週違うテーマで楽曲を流す「SONGLINES」という番組で2023年7月にFLYING KIDSの特集を組んでくれた時に、堀口さん選曲のプレイリストを自分の車を運転しながら聴いていて、この曲のイントロで一瞬、「もしかして他の人の曲も混ぜてるのかな?」と思ったくらい。それくらい存在を忘れてた(苦笑)。でも聴いていくうちにしみじみ「ああ、いい曲なんだなー」と。そう思わせてもらったことに、ものすごく感謝しています。このアルバムを最後に一度解散していますから、あまり振り返る機会がなかったんですけど、今回、改めてアルバムの楽曲を聴いて、自分たちはどの楽曲にも毎回全力を尽くしていたと感じていますが、『Bridge』ではとくにそれを感じますね。

(シングル「真夏のブリザード」の関係者用に配られたCDのジャケット。)
インタビュー : 木村由理江

