52.『新しい方々』は新たなものを生み出すエネルギーに溢れた人たちへの讃歌

――アルバム『新しき魂の光と道』の11曲目は『歌の思い出』。作曲は加藤さんと浜崎さんです。

 当時から加藤が曲を完全に仕上げてくることはなかったので、セッションの過程で僕が作ったメロディもあるんですけど、彼のセンスが当時のFLYING KIDSのメロディの核だったのは確かです。最初に曲を聴いてすぐ、歌の記憶力というか、記憶を喚起する歌の力を歌詞にしようというイメージが湧いて、結果的にいろんな思い出の場面が出てくる歌詞になりました。決してストーリーがあるわけじゃなく、いろんな場面をコラージュして歌詞として成立させた僕の最初の作品だったと思います。

 『きのうの世界』(アルバム『続いてゆくのかな』収録)でも話したように、高校の同級生の加藤が作った曲に書く歌詞はなぜか、地元・栃木にまつわる内容になってしまうんですよ。気づいたのは最近ですけどね。そういうものを引き出す何かが、加藤の曲にはあるんでしょうね。加藤自身にそんな意識はまったくないと思いますけど。

 初期のFLYING KIDSのファンの心を鷲掴みにした曲のひとつだし、お客さんだけでなくメンバーも大好きな曲です。同世代やちょっと下の世代の人たちにはいまだに、「この曲で表現されている“青春”がたまらない」と言われますが、僕自身もそうですね。青春の渦中にいる自分たちが、ちゃんと表現されていると思います。

 初めてライブで演奏した時に、最後の“ナナナ”のコール&レスポンスですごく盛り上がったこと、その時にお客さんみんながジーンと感動していたことを思い出します。それまでのFLYING KIDSの曲とはちょっと毛色が違うから、最初はみんな、ちょっと戸惑っていた気もしますけどね。

――12曲目は『新しい方々』。深津絵里さん主演ドラマ『真夏の地球』(1991年)の主題歌でした。作詞・作曲:浜崎貴司と単独でクレジットされた最初の作品です。

 「イカ天」に出演していたkusukusuというバンドのライブを観に行った時にふと、「ああ、“新しい方々”だなあ」と思ったんですよ。日本のポップスにファンクを取り入れて提案している自分たちも“新しい方々”だし、当時新しいアイドル像を提案していた小泉今日子さんもそうだな、と。何かを変えていこうという空気に満ちた時代だったし、新たなものを生み出していこうというエネルギーに溢れた人たちへの讃歌を作ろうと思ってました。

 当時持っていた8トラックのマルチトラックカセットレコーダーで簡単なコード進行を作って持っていき、それをもとにみんなとセッションしながら、メロディと歌詞を並行して作っていった気がします。なんとなくアース・ウインド&ファイアーのリズムとかグルーヴを意識していました。

 最近もよくライブで演奏していて、昔よりずっといいクオリティで演奏できるようになったと思ってましたけど、今、改めてアルバムの音源を聴いたら、オリジナルも十分いい仕上がりでよかったです。じゅんちゃんのコーラスも、すごくいいし。

(当時の衣装。今にしてみたら伝説のスニーカーだらけ。)


インタビュー : 木村由理江