49.当時の深層心理が反映されているかもしれない『体の弱い若者』

――アルバム『新しき魂の光と道』の4曲目『マッチョズ宣言』は2分に満たない軽快でクスッと笑える曲です。“マッチョズ”のアイディアは誰が?

 僕以外考えられないですね(笑)。メンバーそれぞれのキャラクターをもっと前面に出していいんじゃないかと考えていたので、ちょっとムキムキしたイメージだったフセマンと髭の飯野さんをユニット的に打ち出したらおもしろいと思うと提案して、二人にやってもらいました。ふざけるのはみんな嫌いじゃなかったし、ちょっとしたユーモア、それもちょっとスベるユーモアを、FLYING KIDSの音楽に投入したかったんでしょうね。飯野さんが考えた曲をベースに、あえて打ち込みを使ってみるとか、いろいろアイディアを出し合いながら仕上げました。歌詞もみんなで考えましたけど、環境問題なんて言葉も出ていたりして、ちょっと時代を先取りしてますよね。久々に聴きましたけど、なんか可愛い曲ですね。ちなみにギターソロは僕です。

――5曲目は『体の弱い若者』。作曲はFLYING KIDSです。

 デビュー直後のパワステで演奏した時には『感動だ』というタイトルでしたね。きっかけになった曲のモチーフは加藤が作ってきたんじゃなかったかな。

 僕は子どもの頃から体が弱くて、当時もよく熱を出したり病院に通ったりしてましたから、「自分は30歳まで生きることはないだろう」とずっと思っていたんですよ。音楽もそんなに長くやれると考えてなかったから、常に完全燃焼しようとしてたし、毎回、本当に全力で歌ってました。そしたらある時、若者は体が強くなきゃいけないのに、体が弱いってどういうことなんだろう? という疑問が浮かびまして。

スタジオで作り始めた時には歌詞の決着をどうつけるか、まったく考えてなかったですね。ただいつものようにみんなでセッションを繰り返しながら、瞬間瞬間に思いついた言葉を発作のように声に出してはメモし、それをコラージュ的に再構築して仕上げ・・。あとから見直して、「ああ、こんな意味になっちゃった・・」と思った記憶がぼんやりあります。たとえ若者が死んでも、また誰かが生まれて、この世界は決して終わることなく続いていく、みたいなことを歌うなんて、自分では思ってもいなかったんですよ。深層心理が反映されたのかもしれないですね。

――曲調は歌詞が持つシリアスさを感じさせません。

 FLYING KIDSにも情緒的な部分はあるんですけど、フォークっぽさに通じる日本的な情緒は排除しようとしていたから、サウンドやグルーヴで湿っぽさを吹っ飛ばす、ファンクな仕上がりをこの曲でも目指していたと思います。歌詞にヘヴィなテーマが込められていれば、ファンクのサウンドとグルーヴはさらに活きるし、それによって歌詞もより沁みると考えてもいた。そういうことを日本のポップスに持ち込もうというチャレンジでもあったし、まだ誰も作ってなかった新しいタイプの楽曲だったと言えるかもしれないですね。

(セカンドアルバムのプロモーションで出演したフジテレビの番組「夢で逢えたら」で、

ダウンタウン、ウッチャンナンチャン、清水ミチコさん、野沢直子さんと「心は言葉につつまれて」を演奏。)


インタビュー : 木村由理江