45.会社員時代にコピーとして考えた “心は言葉につつまれて”

――2枚目のシングル『我思うゆえに我あり』の2曲目のカップリングは、アルバム『新しき魂の光と道』収録の『毎日の日々』の別ヴァージョンの『毎日の日々(その2)』です。

アコギヴァージョンですね。使っているアコギは当時のビクターの映像関係のスタッフが貸してくれたギブソンのJ200です。そんな高級なギター、メンバーは誰も持っていなかったから、「このアコギで何かできないかな」とジャカジャカやっているうちにできたのがこれでした。「おもしろいからシングルのカップリングにしよう!」と、その場ですぐに録った記憶があります。『傘がない』と『毎日の日々(その2)』は、サザンオールスターズがいつも使ってたビクタースタジオで一番大きい401スタジオで録ったんじゃなかったかな。

――さらに3ヶ月後、アルバムからの先行シングル『心は言葉につつまれて』が発売されます。マツダ「ファミリア」のCM曲で、ドラマ「ハイスクール大脱走」(テレビ東京系)の主題歌でした。

 “心は言葉につつまれて”というフレーズは、企業のイメージをプランニングする会社に勤めていた時に、ある会議で「浜崎くんもコピーのアイディアを出してください」と言われて出したものですね。先輩には「ちょっと歌詞みたいだね」と言われた記憶があります。アイディアと言葉がなかなか一致しない、そのもどかしさがきっかけでした。最近も、伝えたいことと言葉が一致しないなーと感じることはありますけどね。意味がわかるようでわからない気もしますけど、そこがまたいいのかもしれない。言葉でうまく伝えられないもどかしさ=コミュニケーション不全というのは、のちにアルバム『COMMUNICATION』にもつながるし、当時も今も僕にとって非常に重要なテーマですね。

――作曲は加藤さんです。

 加藤がボビー・ウーマックの影響を受けて書いた曲をベースに、みんなでセッションしながら、僕がメロディと歌詞をつけて仕上げたんだと思います。ホーンアレンジは飯野さんかな。

 当時のライブのエンディングを飾る定番曲で、曲の後半、僕のMCパフォーマンスの締めに、自分の力をみなさんにお裾分けする感じで、手のひらを客席全体に向けながら“マイパワー!”と力一杯叫んでました。最初はシャレでやってたんですけど、途中から熱望されるようになり・・。非常に宗教っぽかったです(笑)。人気曲だったから毎回やってましたけど、あまりにやり過ぎて飽きてしまい、いつのツアーだったか、札幌公演でこの曲をセットリストから外したら、ライブの後に「なんでやらないんですか!」ってファンの人たちに言われたことがありました(苦笑)。

 とくに気に入っているのは〔彼女と話した電話の中身は 何一つおぼえていない〕という歌詞。意味があるようでないような、ぼんやりとした青春の風景がふわっとうまく描けている気がします。MVを撮ってくれたのは、ブレイク前だった高城剛さんです。

(セカンドアルバムの頃の宣伝用写真。)


インタビュー : 木村由理江