2.子どもの頃に好きだった音楽 その1

――子どもの頃から音楽は身の回りに溢れていたんですか。

 音楽は家でしょっちゅうかかってました。父親は県庁職員で母親は普通の主婦、どちらも音楽が得意だったわけじゃないし、造詣や理解が深くもなかったと思うけど、音楽が好きだったんですね。いつだったか、確かまだ小学校低学年だった頃に、スピーカーが一個だけついたモノラルのカセットテープレコーダーを親が買ってきて、すごく盛り上がったことを今、思い出しました。カセットテープレコーダーが我が家に来たことがすごく嬉しかった。でもその頃にはすでにポータブルのレコードプレヤーもあったんだよなあ・・。レコードも、童謡や唱歌が入ったソノシートから父が好きだったサックスプレイヤーのサム・テイラーまでいろいろありましたよ。両親は映画がすごく好きだったからサウンドトラックのLPもたくさんあって、僕は『大脱走』(1963年)のテーマが一番好きでした。そういえば、音楽家にしたいと思っていたわけでもないんでしょうけど、兄と弟は小学校の頃、オルガン教室に通わせてもらってましたよ。

――浜崎さんだけ通ってない?

 そう。なぜ僕だけ? という疑問はあったし、「やりたい」と言ったら通わせてくれたんでしょうけど、習い事が嫌だったから“ラッキー!”と思ってました。オルガンはある時期まで家にあったので、たまに自己流で弾いたりもしてましたね。ただ僕は小学校の頃から無頼を気取ってましたから(笑)、ピアノを習っていた同級生の男の子を見て、「ピアノなんて女の子が習うものだ! それよりオレたちは野球をやるんだ!」と思うようになるんですよ。それで中学になって野球部に入るんですが、顧問の先生の高圧的な指導の仕方や“先輩には絶対服従”という縦社会にすぐに嫌気がさしちゃいまして・・。内申書に響くからと中学3年の担任だった宗像茂先生のアドバイスもあって退部はしませんでしたけど、途中から練習には行かなくなって、プロレスとサッカーを愛するようになったんですね。

――最初に興味を持った音楽は?

 テレビで流れるコマーシャルソングでしたね。例えば、フマキラーカダンの“カダン カダン カダン お花を大切に~♪”とか、明治マーブルチョコの“マーブルマーブルマーブルチョコレート♪”とか明治チョコベビーの歌とか。カセットテープレコーダーが家にきてからは、お気に入りのコマーシャルソングをカセットテープに録音したりしてました。カセットテープレコーダーを録音待機状態にして、テレビの前でずーっと待っていたりね。なかなかタイミングよくキャッチできなかったり、途中で家族の声が入ったりして、何度もトライしてました。自分の好きな音楽を手元に置きたい願望みたいなものは、すごく強かったと思う。

――わかりやすくてキャッチーな音楽に反応する子どもでもあったんですね。

 そういうことなんでしょうね。テレビのテーマソングも好きでしたよ。大好きだった松田優作さんが出ていたドラマ『俺たちの勲章』(1975)や『太陽にほえろ!』(1972~1986)の主題歌が入ったサウンドトラックを母方の祖母に買ってもらって、「かっこいいなー」と思ったり、『俺たちの勲章』の主題歌の『あゝ青春』を聴いて「イントロのピアノ、いいなー」と思ったり。曲が好きなだけでなく、テレビの音楽が手に入った喜びも同じくらい大きかったんですよ。


インタビュー : 木村由理江