129. きちんと向き合う機会のなかったアルバム『Down to Earth』

――初期最後のアルバム『Down to Earth』を改めて聴いて思うのはどんなことですか。

 このアルバムを最後に解散したこともあって、FLYING KIDSを語る上でこのアルバムが取り上げられることも、自分たちが目を向けることも、素直な気持ちで聴くこともできなかった気がするんですよ。大事なのはお客さんの評価だと思うんですけど、それもよくわからないまま終わってしまっていたし・・。今回、久しぶりに通して聴きましたけど、予想以上に名盤でびっくりしました。ちょっと頑張りすぎなところもいくつか見受けられますけど、あの時にしか出ないエネルギーやあの時にしか歌えない歌がたくさん残っていたのもよかったです。当時のメンバーの集中力、そしてプロフェッショナルな音作りに、バンドとしてのクオリティの高さを感じました。アルバム『真夜中の革命』から一緒に組んでいたエンジニアの比留間整さんと高野さんも含めたチームで、時間も手間も惜しまず音のクオリティを追求していた頃ですから、配信化されたこの時期のシングルのカップリングに収録されているカラオケも、ぜひ聴いてみてほしいです。本当に完成度が高いので。

――デビューアルバム『続いてゆくのかな』からの変化にちょっとびっくりもします。

確かに全然違うバンドのように感じるかもしれませんけど、“FLYING KIDS”というバンドがひとつのプロジェクトとして、スタッフサイドの意見も取り込みながら世の中に作品を発表していくというプロセスを8年間旅してたどり着いた境地ではあると思います。FLYING KIDSは2025年にデビュー35周年を迎えているわけですが、ポップに特化した特別な時期のアルバムと言えるかもしれないですね。当時純粋に何をやろうとしていたかが、これだけの時間を経て聴いて今、ようやく理解できる気がします。本当に全力投球でしたね。自分たちが当時このアルバムでやっていたこと、今でも誇りに思える部分を今回、たくさん見出すことができたのはとてもよかったです。このアルバムの曲をこれからライブで取り上げながら、距離を埋めていきたいですね。

――『Down to Earth』の発売は1997年10月22日で、10月25日から全6本の“学園祭シリーズ’97”が始まります。”解散“に向かう不穏な動きはいつ頃から?

 うーん。学園祭ツアーが終わったあとだったと思います。事務所の社長に食事に誘われて、「レコード会社を移籍することを考えてほしい。それが難しいならマネージメント契約を終了したい」という話をされたり、「別のプロジェクトも始めたいので、今までのようにFLYING KIDSに時間は割けない」とフセマンに言われたり、他にも同時多発的にいろんな話が僕のところに舞い込みまして。それを一人で抱えながらFLYING KIDSを存続させるための道をいろいろ探ってみたんですが、少なくとも僕自身が納得できる選択肢を見出すことができず、悩んですっかり困り果てた僕の中で何かがプチンと切れたというか。ちょうどNYから来ていた紀里谷和明さんといろんな話もしていて、彼に「NYで音楽をやれば?」と言われたことや「世界は広いし可能性はいろいろある。環境や活動の場所を変えることで新しい音楽に出会えるんじゃないか」と思ったことも大きかったんでしょうね。それで「バンドでこれ以上前に進めないのであれば、解散するしかないな」と。それは僕なりの誠実なひとつの答えではあったんです。

(雑誌に掲載されたFLYING KIDSの解散の記事。)


インタビュー : 木村由理江