114.浜崎ソロ色の強い曲がFLYING KIDSの世界を広げていた
――『ディスカバリー』に続く4曲目の『僕であるために』はアルバムと同時発売された17枚目のシングルでもあります。
今でも弾き語りで歌いますけど、元になった曲は僕が作りました。それまでにないタイプの曲だったこともあり歌詞がうまく書けずにいたら、加藤くんが「“僕が僕で”みたいに同じ言葉を繰り返すような歌詞はどうかな」と。歌詞は直球ですね。多くの人に理解してもらうためにも簡単な内容にしたかったし、簡単なことしか歌えなかった時期でした。物理的に忙しかったこともあるし、こねくり回したらドツボにハマって書けなくなりそうで怖かったのかもしれない。
中園さんにとってはすごく苦手なグルーヴのはずなのに、すごくよく叩けているなと久しぶりに聴いて驚きました。この頃はみんな、気合を入れてシングルを作っていたんですよ。アイディアもみんなたくさん出していたし、演奏にも力が入っている。やるべきことをそれぞれにきっちりやっているというか。意外かもしれませんけど、こういうポップなことをやるのが、当時のFLYING KIDSはすごく得意でしたね。
――大きく開けた口元が思い浮かぶような素直な歌い方も特徴的です。
初期の頃とは全然違う歌い方ですよね。もうちょっと斜に構えて歌ってもよかった気もしますけど、ヴォーカリストとしての自分を改造していた時期でしたから、新しい歌い方をみんながどう受け入れるのか知りたかったんでしょうね。1993年ごろから断続的に続けていたヴォイストレーニングの成果が出て、人生で一番声が出ていた時期だと思います。
この曲はのちにアニメ「逮捕しちゃうぞ」(TBS系)のオープニングテーマ曲にもなって、ビクタースタジオにメディアの人たちを呼んで記者会見を開いたりしましたね。
――FLYING KIDSの曲というよりソロの曲のイメージが強い気もします。
そうなんですよ。ただそういう曲が仕上がってくることがFLYING KIDSの世界を広げることにもつながっていたとは思います。
――『少年の宝物』、『真夏のブリザード』に続く7曲目は『新しい自転車』。口笛とカウントから始まるインストゥルメンタルです。
丸山さんがある日、元になった曲を持ってきたんですよ。アルバムの舵取りみたいな立場にいた僕には予想外の展開でしたけど、いい曲だからなんとか入れたいと思ったし、歌詞をつけるよりインストのほうがいいだろう、と判断しました。ギターはもちろん丸山さんと加藤くんで、口笛とカウントは丸山さん。ほぼ一発録りで、あとからパーカッションをダビングしたはず。確かじゅんちゃんじゃなかったかな。
曲のタイトルは最初、『自転車』でした。今と違って自転車に乗る人はあまり見かけない時代でしたから、「自転車にこだわらないで、『新しいスニーカー』とかでもいいんじゃない?」と提案したんですが、丸山さんは譲らず。結果『新しい自転車』になりました。確かにこの曲は“自転車”でしたね(笑)。
FLYING KIDSというより限りなく丸山さんのソロに近い曲です。非常に心地よいし、アルバムのヴァリエーションとしてもとてもいいですよね。メンバーもすごく気に入っていて、ライヴのエンディングのSEによく使っています。当時、月刊誌『ギター・マガジン』がこのギターサウンドを取り上げてくれて、丸山さんはすごく喜んでました。『真夏のブリザード』と『ブルー』の繋ぎであり、アナログで言うB面の1曲目的な曲ですね。

(大学生の時の一枚。右は一緒にバンドをやっていた豆野さん。後はキーボーディストの堺敦生さん)
インタビュー : 木村由理江

