113.『快楽天国』にひそむ寂しさと戸惑い
――アルバム『真夜中の革命』は独特な作りです。効果音的なサウンドと英語のナレーションとカウントダウンで構成された『ハジマリ~ignition~』で幕を開けて、ノイズだらけの無線の通信音のみの『オワラナイオワリ~Daybreak~』で閉じる。1曲目は宇宙船の打ち上げを、13曲目は宇宙船が地球を遠く離れ、銀河の果てを目指して闇の中を飛び進んでいる様子をイメージさせます。
アルバムの制作の後半にできた『真夜中の革命』は、自分自身の気持ちにとてもしっくりくる、かつ僕自身がこのアルバムを理解する上ですごく重要な曲だったんですよ。それでアルバムのタイトルも『真夜中の革命』にしたわけですけど、CDジャケットやインナースリーヴなどのヴィジュアルを進めていく中、当時、太陽系内の惑星探査のためのディスカバリー計画がNASA(アメリカ航空宇宙局)でスタートしたばかりだったこともあって、宇宙船のイメージが出てきたんですね。それで宇宙船をイメージさせる曲で収録曲を挟むことで、この時期のFLYING KIDSのトータルアルバムにしようとしたんだと思います。1曲目は僕がイメージを伝え、サウンドはほぼほぼ飯野さんが一人で作ったはず。ナレーションは、当時よく一緒に遊んでいた写真家の桐島ローランドさんが引き受けてくれました。
――『ハジマリ~Ignition~』に続く2曲目は『快楽天国』です。
ファンクでありつつちょっとロック的な楽曲をFLYING KIDSでやりたいと思っていた時に加藤くんが持ってきた、レイジ・アゲインスト・ザ・マシーンっぽい曲が元になっています。丸山さんと加藤くんの二人が得意としているR & B的な世界とは違う、歪んだ音とリフ中心のロックギターサウンドを、二人は見事に弾きこなしてくれています。この頃からギターサウンドがFLYING KIDSの“売り”になっていくので、二人はさらに新たなギターを買ったり、求めるギターサウンドに合うアンプを借りたりと、ギターの音にはすごく拘ってました。
残念なのは、聴いた途端に快楽のスイッチが入るような楽曲を作りたいという想いを歌詞で言ってしまっていること。言わずにそう感じさせるものができたらよかったんですけどね(苦笑)。歌詞には、当時の僕が感じていた寂しさみたいなものも含まれています。30代に入り、メンバーの中には結婚して子どもが産まれる人もいて、バンドの空気が少しずつ変わり始めているのを感じていたんですよ。ビートルズもそうでしたけど、“バンド命”から“家庭命”になっていく流れが見えていたというか。バンドが“仕事”になる、だんだん無邪気じゃいられなくなる、青春もいよいよ終わってしまうのか、と複雑な想いでいました。身体が弱くて「自分は20代で死んでしまうに違いない」とずーっと覚悟していたのに、30代を迎えてしまったことも大きかった気がします。喜ばしいことのはずなのに自分の中には燃え尽きるストーリーしか見当たらず、ちょっと途方に暮れていたのかものかもしれない。

(「恵み深き緑と水と君と」の時のMV撮影の模様。一緒に写っているのは監督のEd TSUWAKIさん。1992年頃。)
インタビュー : 木村由理江

