110. 『少年の宝物』はソロの弾き語りスタイルのルーツ
――15枚目のシングル『真夏のブリザード』のカップリングはアルバム『真夜中の革命』の5曲目でもある『少年の宝物』。曲調が対照的です。
作ったのは『真夏のブリザード』の少しあとでしたね。当時、レコーディングでも活躍できそうな生音が充実したアコースティックギターを丸山さんと加藤くんが探していて、僕もそれに感化されていろんなギター屋さんを回って手に入れたのが“シングルオー”と呼ばれるマーチンのO18でした。すごく音のいいギターで、なんとなく爪弾いているうちにモチーフになるメロディができて、そこからは歌詞も含めてあっという間でした。アレンジにはFLYING KIDSの編曲能力の高さが光っているし、録音もすごくいい。途中のピアノソロを、ビクター青山スタジオのすごくいいピアノで飯野さんが弾き終わった時に「パーフェクトだ!」と思ったのをよく憶えてます。歌の音域は少し低めで、初めてこの低い音域をちゃんと扱えたという手応えもありました。今の僕の歌い方に近いですよね。
――曲中に“青”が出てきます。『ブルー』という曲も収録されている。何かを象徴しているのでしょうか。
“ヒットシングルを意識して曲を書く“ということが、心のどこかに引っかかっていたんですよ。そういうことがちゃんとできるミュージシャンにならなきゃいけないと思いつつ、もっとピュアな、自分の心の叫びみたいなものともちゃんと向き合いたいと思ってもいたというか。それで“青”とか歌ってるんでしょうね。メンバーに対しても、もうアマチュアじゃないんだ、プロフェッショナルとして演奏のクオリティをもっと上げてお客さんに提供しようよと思いつつ、本当にそれでいいのか、という疑問もあった。今はもう“偉大なるアマチュアバンド”でいいと、開き直ってますけどね(笑)。
――浜崎さんがどこかで“プロとしてのあるべき姿”をメンバーに示そうとしていたとしたら、心理的に結構キツかったのではないですか。
自分で自分を縛っちゃうようなところはありました。そこから生じる“爆発”みたいなものが作品になって出てくることになるんですけど。今にして思えば単に器が小さかっただけ。“プロでいなきゃいけない”のも“ピュアでいなきゃいけない”のも当たり前のことですから。今は普通に両方を受け入れられてますけど、当時はそれが無理だったんですね。
『少年の宝物』は今のソロの弾き語りスタイルにつながっている気がします。当時はソロなんて考えもしなかったし、ソロになった当初もバンドと活動することばかり考えていたけど、弾き語りのイメージは僕のどこかにずーっとあった。それはこの曲があったからだという気がします。ソロアルバムに収録されてもおかしくないような曲たちが、この辺から増えてきちゃうんですよね。
アルバム『真夜中の革命』が出来上がったあとに加藤くんと話していて、「この曲、一番好きだな」と自分で自分を褒めたら「えー、そうなんだ」と素っ気ない反応が返ってきてちょっと淋しかったのを憶えています(苦笑)。

(1993年頃にパリに行った時のもの。FKのキャップを被っていた。)
インタビュー : 木村由理江

