145. アルバム『新呼吸』の制作期間は、今の自分につながる大事な時間
――ソロ初のアルバム『新呼吸』を振り返って思うのはどんなことですか。
今日、久しぶりに通して聴いて、方向性の絞り込み具合を含め、もう一度やり直したいと思う部分がたくさんあって、なんとも言えない歯痒さを感じました。ただどれも体当たりで作った曲ですし、引きで見るとそこにはソロ・浜崎貴司として、新たな環境の中で、FLYING KIDSとの違いを明確にしつつ、自分の納得のいく形でファンの期待にどう応えていくかというミッションをクリアするべくいかに格闘したかが、克明に記録されている気がします。前も話しましたけど、そんなつもりじゃなかったのに、今聴くとFLYING KIDSが無くなった喪失感と受け取れる歌詞がいくつもあって、自分が抱えていたプレッシャーの大きさを改めて感じました。
――ソロ活動が始まってアルバム『新呼吸』の発売まで約1年9ヶ月を振り返って思うことは?
FLYING KIDSでの煮詰まりから解放されて、「ここから自由に新しいクリエイティヴに挑戦できる」という期待感に胸を膨らませていましたけど、実際に始まってみると、自分自身と向き合う楽曲制作は楽しいことばかりとはいかなかった。でも家でコツコツ新しい作品を作っていた期間は、今の自分に繋がる本当に大事な時間でした。未熟な部分もたくさんあったから勉強もしたし、トライ&エラーを繰り返しながら少しずつ前に進むのは、ちょっとした“修行”のようでもありました。おかげで複雑な感情を音楽に落とし込んで、いくつになっても歌える作品を作りたいという想いはそれなりに形にできたと思います。シングルっぽくない曲ばかりですけど、非常に気に入ってる曲がいくつもあります。
あと、この時期ならではの歌がちゃんと残っていて嬉しかったですね。一人多重録音のコーラスをあちこちに入れているのは、ソロとしての自分の武器は楽器よりも“歌声”だろうという意識が、すでにどこかであったからなんでしょう。のちにそれを指摘されて、弾き語りイベントのGACHIを始めることになるんですけどね。
――アルバム『新呼吸』のジャケットは紺碧の空とジャンプする白い衣装の浜崎さんのコントラストがとても印象的でした。
タイトルを映像化しようと考えて撮った写真ですね。カメラマンは伊島薫さん。色の綺麗さはさすがだなと思います。クレジットは“アリゾナ吾郎”になっている? それは新しいジャンルの作品も撮り始めていた伊島さんに頼まれて僕がつけた別名です。アリゾナが好きだっていうから「じゃあ“アリゾナ吾郎”でいいんじゃない?」って。“吾郎”がどこからきたかは、僕にも謎ですけど(笑)。伊島さんは『どんな気持ちだい』と『誰かが誰かに』のジャケットも撮ってくれています。インナースリーブはパノラマで写真が展開する蛇腹形式。写真を活かしたら文字が入るのは14面のうち4面だけになってしまい、アートディレクターの林修三さんに「歌詞が全部入らない」と言われて、繰り返しの歌詞はいくつか省略しました。この頃は僕と伊島さんと林さんといろいろ話し合いながらアートワークを進めてましたね。ファンクラブの冊子なんかも3人で作っていて、好きにやらせてもらってました。

(雑誌の対談で恵俊彰さん、豊原功補さんと。)
インタビュー : 木村由理江
