142. サウンドの映像化が得意な加藤くんの仕事も光る『首都高速』
――アルバム『新呼吸』はソロデビューシングル『ココロの底』で始まります。2曲目は『まっ逆さま』。プロデュースしたのは『テノヒラ』と同じく白井良明さんです。
デモテープを渡して、あとはほとんどお任せでした。最後に一回出てくるだけだった〔いかないでないで〕で始まるサビを、曲の真ん中にも持ってきてくれたのも良明さんですね。『テノヒラ』でも話しましたけど、単純だったコード進行を複雑にして奥行きのある仕上がりにしてくれました。ストレートなパンクのようで、実はすごく捻った作りになっているんですよ。久しぶりに聴きましたけど、よくできてますね。良明さんは“浜崎貴司のロック”の可能性のひとつを、僕に提案してくれていたのかもしれないですね。当時「もっと単純でいいんじゃないか?」と言われたりもしましたけど、やっぱりこれが正解なんじゃないかな。
歌詞には当時の自分の“不安感”みたいなものが出ている気がします。「FLYING KIDSの解散と繋げられたくないな、歌ってるのは別のことなんだよ」と思ってましたけど、今にして思うとまさにその喪失感が作らせたとしか考えられない(苦笑)。深層心理って自分の意識を超えて歌に溢れちゃうんだなというのを、この曲で感じます。
――『テノヒラ』、『誰かが誰かに』と続き、5曲目は『首都高速』。編曲に浜崎さんと並んで名を連ねるユアーズは、ソロ初ワンマンのステージも支えたバンドです。
キーボードの五十嵐宏治くんが好きだというベン・フォールズ・ファイブを意識したアレンジで、五十嵐くんが本当にいい仕事をしてくれています。そこに加藤くんがちょっとクイーン的な、ロングトーンのギターフレーズの重ねてくれて、いかにも車が走っているようなイメージになりました。加藤くんは昔からイメージをサウンド化するのが得意なんですよ。ベースの前田くんが弾いているのは、僕が新大久保をぶらぶらしていて見つけた楽器屋で格安で買ったグレコのバイオリンベースだったはず。あのあと他の人にあげちゃったけど、あげなきゃよかった・・。
――この楽曲はどんな経緯で?
歌詞に出てくる“浜崎橋”は首都高速に実在するジャンクション。仕事の移動で当時よく乗っていた首都高速をモチーフに歌を作ってみようと思ったんですね。あの頃はまだ五百円だったなー(遠い目)。今も仲良くしているDJの鈴木しょう治さんに、「ハマちゃん、DJの歌作ってよー」と言われたこともきっかけになっています。カーラジオからDJの声が・・なんて、懐古的だしありがちなシチュエーションのように最初は思えたんですけど、DJは日常的に僕に音楽を伝えてくれる一番身近な存在でもあるので、ちょっとチャレンジしてみました。80年代のヒットナンバーがノスタルジーとして感じられるという設定にしています。人生と道路を重ねているところは、イーグルスの『Life in the Fast Lane』へのオマージュでしょうね。
アルバムの収録曲には世紀末と新世紀を迎える不安と期待、その両方が反映されていますけど、この曲は期待感を歌にしたんじゃないかな。レインボーブリッジができて(1993年開通)、何もない埋立地だったお台場の開発も進み、東京がバブルの頃とはまた違った煌めきを放ち始めていた時期でしたね。やっとメンバーがフィックスしたバンドができてワクワクしている僕の気持ちも、反映されている気がします。

(雑誌に掲載されたもの。撮影は大野純一さん。)
インタビュー : 木村由理江
