141. 若手ミュージシャンとソロのバンドを結成
――ソロ初ワンマンライヴ“浜崎貴司登場 at Maruyamacho”@渋谷ON AIR EASTでバックを務めたのは、メンバーをフィックスしたソロ最初のバンド・ユアーズです。ギターは加藤英彦さん、ベースは前田啓介さん、キーボードは五十嵐宏治さん、ドラムは波田野哲也さん。バンドでレコーディングした曲もアルバム『新呼吸』に収録されています。
FLYING KIDSではメンバーみんなで決めた音を、諦めも含めて「これが正解」と受け止めていたわけですけど、ソロでは常に、あらゆることに“僕の正解“を求められる。「答えが見つかった!」と思っても、メンバーが一人でも変わればまた一から正解に辿り着かなければいけない。時間が限られた制作の現場で作業を進めるのはなかなか難しいだろうというので、根岸孝旨さん、白井良明さん、柴田俊文さんにプロデュースをお願いして“自分を投げ出す”ということをしてみたわけです。すごくいい経験になったし、いろんなことを教えていただいてありがたかったんですが、何かが違う気がしたんですよね。「ソロの浜崎の核はどこあるんだろう?」と考えていたら、「もっと革新的な浜崎貴司を表現するためにソロのバンドを作ったらどうだ?」という提案が、レコード会社の社長でもある事務所の社長からありまして。それでオーディションのようなことをして最初に決めたのが、まだ二十歳くらいだった波田野哲也くんと前田啓介くんでした。どうせやるなら若い人がいいと思って。ただ若手ばかりなのも心許ない気がして、一番古い付き合いで信頼も厚い加藤くんにも声をかけ・・。最後に決まったのが、プロフィールにあった“エルビス・コステロが好き”が気になった五十嵐宏治くんでした。年齢が波田野くんたちと僕の中間くらいなのもちょうどよかった。
波田野くんと前田くんと最初に音を出した時に驚いたのは、「リズム隊が違うとグルーヴがこうも変わるのか!?」ということでしたね。とくに波田野くんのドラムはしなやかでとてもテクニカルで、FLYING KIDSとはグルーヴが全然違う。FLYING KIDSではできなかった新しいことができる、新しい音楽が生まれるんじゃないかと胸が膨らみました。住んでる場所も近かったので、彼らとは毎日のように会って食事し、お酒を飲み・・。かなりの時間を共に過ごしました。波田野くんのお宅にお邪魔して、元ミュージシャンでピアノの調律師のお父さんも交えて昔の『ライヴ・アンダー・ザ・スカイ』のビデオなんかを一晩中観たこともありましたね。
――待望のソロアルバム『新呼吸』が発売されたのは1999年11月20日でした。
新しい呼吸=ソロとしての始まり、ということです。息を吸うのも苦しいようなFLYING KIDSの後期を経て、やっとまた普通に呼吸できるようになったという意味合いもあったかもしれない。FLYING KIDSの解散から最初のアルバムまで約1年9ヶ月。方向性を見出せずに混乱した時期もありましたけど、落ち着いてじっくり自分と向き合い、音楽を作ることもできたわけで、それはとても大事な時間でした。ツアーをそれだけ長い間やらないのも初めてでしたから、焦りや不安もどこかにあったのは確かですけど、それを認めちゃうと負けな気がして、そういう気持ちに蓋をしてめちゃくちゃ頑張った期間でもあったと思います。

(雑誌に掲載されたもの。撮影は大野純一さん。)
インタビュー : 木村由理江
