140. 生まれ変わるような気持ちで臨んだソロ最初のステージ
――曲作りの話が続きましたが、浜崎さんのソロ活動に最初に私たちが触れたのはライヴでした。1998年9月27日に開催された“LINES LINE UP”というフリーコンサートで、会場は代々木公園野外ステージ。『身体と歌だけの関係』、『呼吸のしるし』、『ココロの底』、『カオス~その先へ』と新曲を披露しています。
FLYING KIDS解散の時には本当にすべてを使い果たした感があって、それまでとは違う音楽をやらないと息継ぎができないような感覚になっていたんですよ。だからソロで初めて人前に立つことで、僕は生まれ変わるような気持ちでした。しかもバンドのメンバーは高野寛さんがギター、クラムボンのミトくんがベース、黒瀬蛙一くんがドラム、すかんちの小川文明さんがキーボードという腕利き揃い。ロック色の強い演奏で、僕の“新しい旅立ち”をみんなに実感してもらえたと思います。僕自身はエンターテインメントとしてのクオリティを追求できる余裕はなく、生で歌うだけで精一杯という状況でしたけどね(苦笑)。
――『ココロの底c/w 呼吸のしるし』の発売以降は、インストアイベントで弾き語りをする機会も増えています。弾き語りはほぼ初めてだったのでは?
FLYING KIDSの初期にちょっとやったことはありましたけど、慣れてはいなかったですね。だから最初のうちは不安めいたものがありました。でも弾き語りができないとソロ活動は難しい。経験を積むことで見えることもあるだろう、やれることは何でもやろうと考えていました。ただその時点で“ソロの浜崎”に僕自身が、そしてお客さんが望んでいたのは、バンドスタイルだったと思うんですよ。弾き語りはあくまで予告編というか。その後、ファンクラブのイベントで定期的に弾き語りをするようになって、ファンの人の喜ぶ様子に触れたり、自分でも手応えを感じるようになって、少しずつ弾き語りに意欲的になっていったというか。今では僕の音楽スタイルの大きな柱になってますけどね。
――ソロ初のワンマンライヴ“浜崎貴司登場 at Maruyamacho”@渋谷ON AIR EASTは1999年7月17日でした。アルバム『新呼吸』発売の4ヶ月前です。『ココロの底』から始まって井上陽水さんの『傘がない』、椎名林檎さんの『幸福論』などカバーやFLYING KIDSの曲、未発表曲など全20曲を披露したようです。
フルのライヴはFLYING KIDSのラストコンサート以来、約1年半ぶりでしたね。アルバムのレコーディングもほぼ終わって、ソロの方向性も見えていた時期でした。FLYING KIDSのデビューから解散に至る過程で僕が手放してしまった、また手放してしまわざるを得なかった“ロック的な精神”をもう一度取り戻すコンサートだったと思います。ものすごく気合が入っていたし、今はもう詳しくは思い出せませんけど、選曲それぞれにその時の自分の想いが反映されています。(一杯一杯だったから)ライヴそのものの記憶はほとんど残っていないですけど、ドラムの中園さんが珍しく観に来てくれて、終わったあとにリズム隊の波田野哲也くんと前田啓介くんに「よかったよー」みたいなことを言ってくれたことだけは、今でもよく憶えています。

(ソロデビューアルバム「新呼吸」のポスター。写真は伊島薫さん。デザインは林修三さん。)
インタビュー : 木村由理江
