120. 大きかった高野寛さんの存在
――『Love & Peanuts』(1997年4月23日)は、事務所の社長をプロデューサーに据えた新体制で作った最初のシングルです。
資生堂の“アグレミネラルウォーター”のCM曲をFLYING KIDSで、といただいたお話でしたね。打ち合わせには僕とフセマンが参加して、そこでCMの監督さんから「とにかく“セクシー”なものを」とリクエストされまして。“セクシー”って考えてできることじゃないのはわかってるんですけど、みんなで「一体何が“セクシー”か?」と一生懸命考えて“セクシー”=“官能(エロス)”と解釈し、かつそれを対極にあるキュートなものと組み合わせることでオシャレに表現したいと考えて楽曲を制作したはずです。“ピーナッツ”が出てきたのもその辺からじゃなかったかな。CMで使われたのは冒頭の部分ですけど、『セクシーフレンド・シックスティーナイン』の延長にあるロック色の強い曲調にしつつ最新のFLYING KIDSを聴いてもらえるようにと、とにかく試行錯誤を重ねて作っていった気がします。
久しぶりに聴きましたけど、記憶していたよりずっといい仕上がりで安心したというか嬉しいというか。努力した甲斐がありました。中園さんも、苦手な8ビートのグルーヴをちゃんと叩けているし、フセマンのベースもすごくしっかりしてる。高野さんの存在も大きいですが、こういうのもFLYING KIDSはちゃんとできるんですよね。
――アレンジに参加している高野さんは、アルバム『Down to Earth』の全曲に編曲でクレジットされています。
事務所の社長はミュージシャンではありませんから具体的なアレンジはできないんですよ。それで社長のアイディアをメンバーと共有する翻訳者的な役割を担ってもらおうとしたんだと思います。高野さんとは一緒にステージに立ったこともありましたし、神経質そうに見えておおらかで天然なところもある。だからみんなリラックスしてレコーディングに臨めたと思います。プロデューサーではなく、アイディアを出したりそれぞれの話の聞き役に回ったり調整したりという中途半端な立ち位置でしたから、高野さんには申し訳なかったなと今になって思います。
――当時のインタビューで浜崎さんは「“解放人間‘97!”ツアー(5月3日~東名阪で開催)のテーマを作るようなつもりで『Love & Peanuts』を作った」とも話しています。またその取材で伏島さんが、「浜ちゃんがサボってスタジオに来ない時に高野くんが仮歌を歌ってくれた」と話しています。
そういうことがあったんですよ。この頃の僕は眠くて眠くてしょうがなかったんです。遅刻もよくしていたみたいで、音楽番組の収録に遅刻して事務所の社長にすごく怒られた記憶があります。その少しあと、ドリアン助川さんと飲んだ時に「テレビ局のロビーで聞いた浜崎くんの噂がすごく印象に残ってるんだよね」って言われました。それはどうも僕の遅刻絡みの話だったらしく・・。いやな印象の残り方ですよね(苦笑)。
――肉体的に限界だったんでしょうかね。
そうかもしれない。よくよく考えたら僕を働かせ過ぎなんですけど、その忙しさを超えていくのが当然と、周りも自分も思ってたんでしょうね。でもなぜかみんなに迷惑をかけた記憶が、僕の中ですっかり抜け落ちてまして・・(苦笑)。でもその時期以降は、ずいぶん気をつけるようになりました。

(大学時代の手帳の落書き。新聞を読む男の360度。)
インタビュー : 木村由理江

