116.誰かを励まそうとして実は自分を励ましていた『溢れる想いがあるかぎり』

――10曲目は『溢れる想いがあるかぎり』。こんなにエールを送る曲は、珍しいですよね。

 「テーマがストレート過ぎるんじゃないか」と事務所サイドにすごく言われたし、自分でも「こんなに“頑張れ”って歌っちゃっていいのかな」というためらいと恥ずかしさがありました。でも「きっと誰かを励ます歌になるからちゃんと作らないと」という使命感の方が強かった。だから「この曲によって救われた」と言われるとすごく嬉しかったですね。本当にいろんな人を励ますことができた曲だったんです。

――誰かを励ます歌を作ろうと思うようなことが、当時何かあったんですか。

 あったのかもしれないけど、思い出せないですね。無意識にそういうフレーズを書いて歌い始めたことへの照れがあって、そう思い込もうとしたのかもしれない・・。今にして思えば、自分の気持ちを吐露しているだけだし、自分を励まそうとしていたんでしょうね。期限内に狙った曲を作るプロの作家性が必要な時期に差し掛かっていて、自分でもそうなれるように成長していこうとはしていましたけど、ほとんどの曲は自分のソウルの赴くまま正直に歌にしていただけだったという(苦笑)。

レコーディングではスライドギターのテイクで丸山さんと揉めたのをよく憶えています。「〔負けるもんか〕と歌っているんだからもっと力強く弾き倒してほしい」とリクエストして弾いてもらったテイクを採用しようしたら、珍しく丸山さんが嫌がったんです。もう断固拒否、みたいな。ディレクターの安藤広一さんの提案で多数決をとったら、ほとんどが僕の意見に賛成だった。非常に苦い思い出ですけど、その時のジャッジは間違えてなかったな、と久々に聴いて思いました。

 アルバムをリリース直後のツアー以降ほとんどやってないし聴き返すこともなかった曲でしたけど、こんなに想いを込めた曲だったんだと、改めて思いました。なんとも言えない正直さがあるし、入魂ぶりが伝わってくる。メンバーもすごくエネルギーを注いでます。

――11曲目の『暖炉』はタイトル通り心が暖かくなる曲です。

 僕がマーチンのアコギでボロボロやっていたら、この曲のメロディと歌詞がほぼ同時に出てきた記憶があります。“幸せ”しかない情景を歌っているなーと自分でも思うけど、インスピレーションで作っているので、歌詞については話すことはほとんど何もないないんです。今、久しぶりに聴いて、〔アイ・ラブ・ユーを燃やそう 君と 白い世界がとけるまで〕ってすごい歌詞だな~と思いました(笑)。

丸山さんのアコギも、フセマンのベースもすごくいいですよね。フセマンは意外に、こういう曲が得意なんですよ。飯野さんもロマンチストだからプレイに叙情的なところがあって、それが見事にハマっている。ただ中園さんはこういうゆっくりした8ビートの歌ものはすごく苦手で。音もファンクの影響でどうしても大きくなってしまう。それでこの曲のドラムは音量をかなり下げています。ドラムの音が大きくないと気が済まない中園さん的には不満もあったかもしれないけれど、その頃には僕はプロデューサー的な立ち位置でしたし、中園さんも「まあいいんじゃないの?」みたいな感じでしたね。この曲を機に、歌もののドラムの音量はほぼ絞っています。

(1995年から1996年にかけて行われたTORNADO TOURのフライヤー)


インタビュー : 木村由理江