174. 完成した曲はすぐに聴かせたくなる

――2003年7月は、アルバム『トワイライト』のレコーディングの合間を縫って3日間、紀里谷和明さん初監督作品『CASSHERN』(2004年公開)の撮影に参加しています。

 紀里谷さんが活動の拠点をNYから東京に移してからも、よく会っていたんですよ。カメラマンとしての彼の仕事の幅が広がっていくのを間近で見ていたし、「映画を撮るのが夢だ」という話も、彼の口からしょっちゅう聞いていた。だから映画を撮ると決まった時には、やっと彼の夢が叶うと僕もすごく嬉しかったですね。で、「ずっと相談に乗っていたんだから、初監督作品には端役でいいから出せ!」と僕が冗談で言っていたのを憶えていて、ちゃんと僕を呼んでくれたんですね。でも事前に台本は渡されず、映画の全体像もほとんど説明されず、当日、撮影所でいきなり「あなたは麻薬中毒の右翼の将校役だから」と口頭で言い渡されまして(笑)。しかも大ベテランの大滝秀治さんや寺尾聰さんもいるシーンで、急遽セリフを一言与えられ・・。とっても厳しかったですね。何度も何度も「もう一回!」ってなかなかOKを出さない。仕上がったのを観たら僕の声はロボットボイスみたいになっていて、「なんだよ、あいつ!」って(笑)。

――この年、初参戦したフジロックについても少し話を聞かせてください。7月25、26、27日の3日間、ゴンドラで20分かかるステージ・サイレントブリーズで、マイクもアンプもない生歌&生ギターでシークレット・ライブをされたようです。初日は雨で出番なしでしたが、残り2日間は切り株に腰を下ろし、心地いい雰囲気の中で弾き語りを聴かせたとか。

 一緒に出ていた男女デュオのビューティフルハミングバードとビートルズの『Nowhere Man』をセッションした時に、僕のギターソロがうまくいかず・・。苦肉の策で口笛を吹いたらこれが実にいい音で、すごく気持ちよかったんですよ。それで「みなさん、ご一緒に」と声をかけて始まった口笛の大合唱がまたとんでもなく美しくて・・。ザ・マッド・カプセル・マーケッツとかプライマル・スクリームとか外国人アーティストのライブもたくさん観たし、どれもおもしろかったけど、僕にとってはあの雄大な自然の風景にこだまする口笛の大合唱が聴けたことが、フジロック最大の出来事でした。

――アルバム『トワイライト』の発売は2003年9月29日。当時の会報によると、アルバムの冒頭を飾るタイトル曲は、2003年3月6日に札幌であったVOICE TOUR 2003@KRAPSホールのライブで「先月作った曲」と初披露。「好評で一安心」とも書いてありました。

できたらすぐにやる男なんだなー、オレは(笑)。曲作りはだいたいお昼から始めるんですけど、MDにインデックスのカウントが100を超すくらいのモチーフやメロディを吹き込んでも、「曲になるかも!」と思えるのは数える程度で、それも翌日には「なんか違う・・」となる。だから本当に「できた!」となると嬉しいし、すぐに聴かせたくなるんですね。

この曲は、シングルを意識して曲作りをしていた時に、Cのコードを押さえようとして隣のフレットのDのポジションで弾いちゃったところから歌詞を含めた曲想が湧き、一気にできた曲です。最初はギターとピアノ中心のアレンジで、もう少しゆったりしたバラード風の曲調でした。でも新しいレコード会社に移ったことだし、ハマザキバンドの“次”も視野に入れてもう少しポップスの要素を加えたい、と。それで編曲は、ミニアルバム『2002』に続き、高野寛さんにお願いしました。おかげでとても爽やかなポップチューンになりました。

(1999年4月21日クラブ・プラスティックでのシークレットライブの時の写真。まだ33歳。)


インタビュー : 木村由理江