170. 作品作りは“発明”と同じ

――『TOUCH! SCRATCH! IT’S SMOKY IN HERE~あたしはあたしでいられなくなる』は、何がきっかけでできた曲なのでしょう?

当時、“自分探しの旅”みたいなことがやたらと言われていたんですよ。僕自身は「“自分”なんか探しても見つからない、むしろ“自分”を見失ったり捨てたりすることで“自分”が見つかるんだ」とどこかで思っていましたから、それを歌にしたかったんでしょうね。

――さらにそれを性的なことと絡めて・・。

 性的なことって大体、自分自身を他人に預けることですから。そこで普段知っている自分とは違う自分に出会ったり、大切に守っていたはずのものが壊れていったり、そういうことがおもしろかったりする。最後に〔バイバイ〕と繰り返し歌っているのは、自分にバイバイする、みたいな意味合いです。でも結局残るのは“自分”なんですけど。

――この歌詞もいろんな読み取りができそうですね。

 僕にとって作品作りは“発明”と同じなんですよ。だから毎回新しいことをしたいし、いろんな仕掛けや工夫を施したいし、聴いた人にも“こんな感覚や気持ちは初めて”と驚いてもらえたらいいな、と思っています。後半、〔体を貫くサックスふかせて〕という歌詞に続いてサックスのソロを鳴らしたのは、言葉の響きとサックスの音色によって生まれるちょっと妖しい景色に触れて、それぞれに想像を膨らませてもらいたかったから。独特の世界になったと思っているし、おもしろがってもらえていたら嬉しいな、と。ただこの曲、ライブではほとんど演奏してないんですよ。ちょうどいいタイミングでツアーがないと、ライブでやる機会を逸してしまう。結構気に入ってたんですけどね。

――新たにレコーディングした2曲には、盟友の高野寛さんが編曲とギターで参加していますね。

ハマザキバンドがバッキバキにチャレンジングだったから、暴走し過ぎないためには高野さんのポップスの視点が必要だと、どこかで考えたんでしょう。とくに『幸せであるように』は、シングル的な意味合いがありましたから。高野さんの方が、僕より格段にギターの腕は上というのもあるし(笑)。

あと、MCUくんのセッションでいい刺激をたくさん受けたDJのROCK-Teeさんにも参加してもらいました。「スイングしなけりゃ意味がない」ツアーで、ハマザキバンドとしてできることはすべてやり切った感がありましたから、新しい要素、違うエッセンスを加えて、バンドとしてのネクストステージを見い出したかったんだと思います。

――3曲目の『海岸線』はバラード。アルバム『AIと身体のSWING』に収録できなかったのはこの曲ですね。

 この曲ができた時に高野寛さんに聴かせたら、当時彼がプロデュースしていた山下久美子さんのアルバムに「ぜひ提供して欲しい」と言われまして。最終的に高野さんとの共作パートを加えて、山下さんのアルバム『ある愛の詩』(2002年6月26日)に『海岸線まで』というタイトルで収録されたんですが、発売が3ヶ月早かった僕のアルバム『AIと身体のSWING』への収録は見合わせなくてはならず・・。それがとても心残りだったので、収録できて嬉しかったです。

(当時のレコーディングメンバー。左から山田裕之、堺敦生、高野寛、浜崎、ROCK-Tee、波田野哲也。)


インタビュー : 木村由理江