169. 制作のハードルが高かった『幸せであるように』のソロバージョン
――事務所が企画の段階で想定していたのはおそらくシングルだったろうということでした。どんな経緯でミニアルバムに?
僕がお願いしたんだと思います。完成していたのにアルバム『AIと身体のSWING』に収録できなかった『海岸線』を少しでも早く世に出したい、収録してあったツアー最終日のライブ音源をCDで残したい、早く聴いて欲しい、という強い想いがありましたから。それでぎゅうぎゅうに7曲を詰め込んだミニアルバムになったんですよ。
――ミニアルバム『2002』のレコーディングは10月18日にスタート。初日から翌朝5時まで『幸せであるように』と『TOUCH! SCRATCH! IT’S SMOKY IN HERE~あたしはあたしでいられなくなる』のダビングをしています。さらにダビングを加え、マスタリングは10月30日。『幸せであるように』は1曲目です。どんな想いで制作に臨んだのでしょう?
MCUくんとのコラボのように他の人のプロデュースなら、僕は思い切ってそこに飛び込めばいいわけですけど、僕はFLYING KIDSと自分の境目を見極めきれていなかったので、自分でプロデュースをするのはちょっと難しいな、と。それでベーシックなリズムとホーンのアレンジを山田裕之くんに任せて、それをもとにみんなでセッションしました。ブラックコンテンポラリーを思わせる大人っぽいアレンジになったのは、山田くんのセンスですね。「もっとイケイケでもいいんじゃないの?」というスタッフの意見もありましたけど、MCUくんのヒップホップバージョンと差別化したかったのと、FLYING KIDSの楽曲を自分がこういう形(ソロの作品として新たなバージョンで)で扱っていいのかという“迷い”が最後まで残っていたのと、当時の自分が一番力を発揮できるものにしたいという願望があったのと・・。あれこれ考えすぎてこの形に落ち着いた気がします。仕上がりには満足していましたけど、「これが正解だ」と思えなかったのも確か。デビュー曲ですからね。やっぱりオリジナルを超えられないんじゃないの? みたいなのはどっかにあった気がする。でも今聴いて、非常によくできていて安心しました。この歌を残せたのもよかったなー。30代後半は歌い手として脂が乗っているというか、肉体的には一番調子がよかったので。
――2曲目は書き下ろしの新曲『TOUCH! SCRATCH! IT’S SMOKY IN HERE』です。当初はサブタイトルの『あたしはあたしでいられなくなる』がタイトルでした。
僕のルーツミュージックであるロックンロールとジャズをミックスさせたような曲調ですね。『AIと身体のSWING』、『惑星のブルース』と同じ系列だから、3曲合わせて“欲望シリーズ”と言っていいかもしれない(笑)。曲は堺敦生さんと一緒に、アレンジはバンドのメンバーと高野寛くん、DJのROCK-Teeとセッションして固めました。で、レコーディングに向けて最終的な手直しをしている時に、ガイ・リッチー監督・脚本の、ちょっとおしゃれな悪漢映画『Lock, Stock and Two Smoking Barrels』(1998年)を知って、タイトルのかわいさにやられてしまい・・(笑)。タイトルの変更に合わせて歌詞も少し手直ししました。と言ってもどこをどう直したのか、今となってはちょっとわからないんですが。その頃は映画を観て影響を受けることが多かったですね。

(2001年8月19日に新宿LOFT PLUS ONE開催されたイベントの時のもの。主催はライターの角野恵津子さんでした。)
インタビュー : 木村由理江

