167. 2枚のアルバム制作を経て辿り着いたソロの音楽性と歌い方

――アルバム『AIと身体のSWING』が完成した時の感覚を憶えていますか。

 すごく達成感がありました。前作『俺はまたいつかいなくなるから』を一歩先に進められた、次はさらにステップアップできるはずだという確かな手応えがあったし、“これがソロ・浜崎貴司の音楽性と歌い方だ”と胸を張れるものにやっと辿り着けた、という想いもありました。前作の『俺はまたいつかいなくなるから』と『AIと身体のSWING』の2作を一緒に作ってくれたメンバーには、感謝しかないです。

――「“本物のバンド”に近い関係性だった」と前作について伺った時にも話していました。セッションの時間も長く、食事をしながら作品についてたくさん話し合った、と。

 事務所のスタッフはアルバムの内容や方向性についてほぼ何も言いませんでしたから、本当に僕とメンバーだけで作ったと言えると思う。メンバーは曲作りにも力を貸してくれたし、仕上がった楽曲の本質を表現するためのサウンドを必死に見極めようとする僕の想い、描いているイメージを深く理解し、それを形にするために力を尽くしてくれた。僕の“音楽的な挑戦をするんだ”という意志も共有し、それをいかに“ポップス”として成立させるか、そのギリギリのバランスを押し測ってくれたんですよね。僕の作品のために自分たちの個性と才能とアイディアを少しも惜しまなかった彼らのミュージシャンシップは、本当に素晴らしかったです。

――だから浜崎さんも伸び伸び歌えたわけですね。

“サウンド”は歌にとってのひとつの舞台設定みたいなものですから、彼らが形にしてくれたソロ・浜崎貴司の世界が僕の歌い方と歌い手としてのポテンシャルを引き出してくれた、という表現の方が正しいかな。2枚のアルバムのレコーディングを通して、僕にとって一番しっくりするのは、FLYING KIDS初期のワイルドさとその後のポップス性を混ぜ合わせつつパッションで歌うスタイルだと気がつけたし、ここからそれを磨いていこうと思えた。今もその延長線上にいます。

――2024年7月20日の“終わりなきひとり旅 誕生日スペシャルsono 207 ヨコハマ特別編~ハマザキバンド復活! ”@横浜THUMBS UPも素晴らしかったです。

20年ぶりでしたけど、リハーサル前にライブで演奏する曲を伝えたら、メンバーが当時の譜面を持ってきてくれまして。「いつでもまたやりますよ」という気持ちで、譜面を取っておいてくれたのかなと思ったりしました。本番の演奏も素晴らしかったし、またぜひやりたいですね。

――アルバム『AIと身体のSWING』のジャケットをイラストにしたのは?

 若手カメラマンのAKIOくんにお願いしていろいろ撮ってもらっていたんですが、FLYING KIDS時代からほとんどのジャケットに自分が出続けていることにふと疑問を感じたのと、本人が出ていないジャケットも個人的に嫌いじゃなかったこともあり、急遽、方針転換したんです。AOKIくんは残念がっていましたけど、写真はインナースリーブで使うことで納得してくれました。イラストレーターの細谷由衣子さんには“文学の香りがするものを”とお願いしたはずです。どこかで純文学的な言葉や表現にこだわっていたので、短編小説を読むようなイメージがあるといいな、と。どこか寂しげでちょっと重々しくてかっこいい、なかなかない世界ですよね。イラストにしてよかったです。ジャケットの色もいいな。写真、撮っておこう。

(ファンの方が持っていてくれたFLYING KIDSの1994年7月23日、京都公演のチケット。会場は京都MUSE。)


インタビュー : 木村由理江