164. 音の響きと歌詞の世界が一体化した『あなたとキスをしてはいけない』
――アルバム『AIと身体のSWING』の5曲目は『オンナLIFE』(2002 version)。KICK THE CAN CREWのMCUさん、アコースティック・ギター2本とコーラスで聴かせる骨太なロックで注目を集めていたアナム&マキが参加しています。
THE BOOMがプロデュースしたイベント「青空の下、星空の下で 万博スペシャル」(2001年7月29日@万博公園もみじ川芝生ひろば)に出た時に、MCUくんに「FLYING KIDSのすごいファンなんです。今度一緒に飲みに行ってください」と声をかけられまして。その飲みの席で今度は、「何か一緒にやりませんか」と。同じ頃、「すごいバンドがいる」と友達に誘われて行ったイベントで観たのがアナム&マキで、ライブがめちゃくちゃかっこよかった。ヒップホップとアコースティック・ギターのロックが『オンナLIFE』というテーマと合わさったら、自分の想像を超えるものになるんじゃないかと思って3人に来てもらったんです。当日、マキがワイゼンボーンのアコースティック・ラップスチールギターを持ってきて弾いてくれました。
――その日はMCUさんもスタジオに?
MCUくんのレコーディングは翌日だったはず。彼の仕事っぷりも見事でしたね。普段食事をしながら話している時は、ノリがよくてしょうもないことばっかり話しているのに、リリックを書かせたらびっくりするくらい言葉の選び方に品があるし、韻の踏み方も繊細だし、フレーズの組み合わせも意外性に富んでいるし、ベースになっている世界観からポーンと飛ぶその飛ばし方と戻し方も絶妙だし・・。スタジオでマイクの前でラップを始めた途端、また豹変しますからね。「すごいなー、めちゃくちゃかっこいいんだなー」と、惚れ惚れしました。彼はすごいですよ。
――6曲目は『あなたとキスをしてはいけない』です。
びっくりするくらい声が出てますね。とくにファルセットの上の方とか。今も出るけど、もうこんなに綺麗には鳴らない・・。この頃に戻りたくなりました(苦笑)。
この曲は、一度観たことのある映画『バッファロー‘66』(1998年)を画面に流しながらヘッドフォンでビョークの新作(『Vespertine』2001年)を聴いていた時にーーどういう聴き方をしていたんだ? という話ですけど(苦笑)――ふとヘッドフォンを外したら「don’t kiss me」というセリフがいきなり飛び込んできまして。そこから曲想を得ました。ビョークの、ちょっと狂気すら感じさせる魂の叫びみたいな歌声も影響したんじゃないかな。書き上げるまで、たいして時間はかかりませんでしたね。
たまたま押さえたコードの響きが気に入って、そのコードから作り始めたんですが、進行自体はシンプルなのに、いまだに分かりやすく表現できない謎のコードばかりが続く曲でして。(ギターを取り出しコードを押さえながら)ここからこっちに行くんですけど、このコードもなんて説明したらいいか・・。基本はFmaj7の♭5なんだなー(ぶつぶつ)、で、そのバリエーションというか・・。最初のコードはメジャーだけどちょっとダークな雰囲気のある響きで、次のコードではうっすら幸せな気配になる。それを行ったり来たりして、最後にシンプルなFとCのコードに辿り着いた時に、「キスをしてはいけない」と言い聞かせてはいるけれど「本当はキスしたい」という想いが爆発するんですね。音の響きと歌詞の世界が一体化しているんです。好きなソロ曲のひとつです。

(AIと身体のSWINGのジャケット撮影の時のもの。当時36歳。撮影はakioさん。)
インタビュー : 木村由理江

