162. おしゃべりな女性をモデルにした『惑星のBLUES』
――『AIと身体のSWING』の最後のフレーズ〔そしてここで壊してやる〕にはどんな意味合いが?
この曲は複数の意味合いを込めたフレーズが多いですね。〔今、ここで立っている〕は、勃起してる=本当に存在してる、という意味でもあるし、〔守ってやる〕は、自分の音楽をこれからも発表していくよ、という宣言でもある。〔壊してやる〕は、あなたの想像を超えたものを作っていくよ、という想いなんでしょう。そう考えるとまた全然違って聴こえてくるんじゃないかな。〔浅はかな勢いに乗せて、己ちっちゃな存在だって胸を張るのさ〕とか〔出鱈目じゃ満たされはしない 己ちっちゃな存在だって欲張りたくて〕とか、本物になりたいという正直な想いも吐露されて・・。欲望と真摯な想い、両方が込められた“ソウルミュージック”であることに今、気づきました(笑)。そうかー、すごいなー。
この曲が完成した時には「これでアルバムが完成した!」と心の底から思えましたね。アルバム『俺はまたいつかいなくなるから』の制作過程で明確になっていた僕のソロのサウンドの世界観を、この曲でさらに一歩前進させられたという手応えがありました。
――アルバム『AIと身体のSWING』の2曲目は『惑星のBLUES』です。
ある女性をモデルに作りました。一緒にいると延々しゃべり続けているんだけど、どれも“私の話”ばっかりで、そのうち「いい加減にしてください!」という気持ちになってしまう。もちろん本人は、そんなことに全然気づいてない。彼女を見ながら「まるでひとりで宙を舞っているみたいだなー」と思っていたし、「人と人の間にはどうしても埋まらない距離があるんだな」といつも感じてました。この曲がお気に入りの知り合いは、「距離が縮まらないまま永遠に惑星が回り続ける切なさがたまらない」と話してました。
曲は僕が作ったモチーフを堺敦生さんと発展させました。半音のコード進行が続いたり微妙に転調しているところは堺さんのアイディアです。聴いていると何の引っかかりもなく歌が流れていくんですけど、実際に演奏すると複雑で、ちょっと驚くような構造になっています。楽曲的に本当によくできていますね。当時気になっていたEGO-WRAPPINを意識した部分もあります。
――2コーラス目はAメロの冒頭からすぐサビへ。新鮮でした。
Aメロがパッとなくなったら曲の流れとして綺麗かな、と。ちょっと珍しい展開かもしれないし、今では思いつかないんでしょうけど、当時は特別と思わなかった。
コーラスは森真美さんです。彼女とは2000年4月頃、山田裕之くんの紹介で初めて会ったはず。男だけで回った「オレマタ、マタ?」ツアーの流れでレコーディングを進めていくうちに、やっぱり女性コーラスが欲しいな、と。森さんには2002年の「スイングしなけりゃ意味がない」ツアーにも参加してもらいましたね。
そういえば、この曲を最初にレコーディングしたのはベーシストのTOKIEさんとでしたね。前のマネージャーのプロデュースでインディーレーベルから出たオムニバスアルバム『光合成』(2001年8月12日)に収録されています。
――3曲目は『MUSASINO』。『Musasino-2000』を『boot 1』に収録した時点で次の展開は考えていなかったと、話していませんでしたっけ?
東京で最初に住んだ“吉祥寺”をモチーフにしたことは気に入ってましたから、暮らしていた当時の自分の感覚や情景を混ぜ合わせて、ちゃんと自分の青春の歌にしようと考えたんでしょうね。単なるノスタルジーで終わらないように、〔あの頃より あなたが好き〕と歌って“今”を肯定し、また引きずられるように〔遠い私の胸騒ぎがしてる〕と過去に戻る・・。微妙な感情の揺れが表現できたと思います。

(ファンクラブの会報用に書いた絵と詩。オーサカ・カゼヒキ・ブルース。)
インタビュー : 木村由理江
