156. 『オンナライフ』(2001 version)で蘇る一流のミュージシャンシップ

――3曲入りの『boot 1』の1曲目は『オンナライフ』(2001 version)です。

これは下山淳さんプロデュースのデモテープの音源ですね。

――ということは、ギターは下山さん、キーボードはKYONさん、ベースは井上富雄さん。ドラムは、湊雅史さんか三浦智津子さん、どちらですか。

三浦さんです。事前に用意していた曲とは別に、当日いきなりスタジオでラフな音源をみなさんに聴いてもらい、軽くセッションしただけで録ったはず。もしかしたらまだサウンドチェックの段階だったかも・・。その時に「さすが一流の人たちは違う!」と感動したのは、僕がエンディングでいきなり、ラジオ番組のパーソナリティ風に「いよいよ来週最終回になったね。それじゃあ来週。さようなら」と始めて「バイバイ」と4回繰り返して歌を終えたら、合図もしていないのに全員の演奏もダダン! と同時に終わったこと。僕が「バイバイ」と言い出した時点で、「終わらせようとしている」と察知したんでしょうね。FLYING KIDSは何度もリハーサルを重ねて本番に臨むタイプで、想定外の状況にうまく対応できないバンドでしたから、「こんなこともできるんだ!」とびっくりしました。FLYING KIDSはいまだに、対応できませんけど(笑)。

――(笑)。

 久々に聴いたら他にもいろんな場面が蘇ってきましたね。フルートっぽい音はKYONさんのセレクトですけど、ファンクにフルートを合わせるなんて発想は僕にはなかったから、そのセンスに驚いたし、みなさんの正確なのにファンキーなリズムや、気持ちのいい音もさすがだなー、と。別のセッションがあるからと先にスタジオを出るKYONさんが、「サンプラーはあとでピックアップするから、中に入ってる音はなんでも使ってね」と言い置いて颯爽とスタジオを出て行った時も、ちょっと感動しました。機材を全部持ってスタジオを出るのが普通だから、わざと置いてってくれたんだと思って。一流の人は、テクニックだけじゃなくて心遣いも素晴らしいんですよ。下山さんも、ちょっと強面だけど本当に優しい人で、最後まで僕に寄り添ってくれましたからね。一流のミュージシャンシップにも教わったセッションでした。

――『オンナライフ』では〔女のコみたいに〕と繰り返し歌っています。

 “情緒”とは縁遠い乾いた内容ですけど、“愛”とか“エロ”の匂いがどこかにあって、ファンクミュージックならではの“おかしみ”もある歌詞にしたかったんです。そしたら、自分も女の子になってみたい、という歌詞になった。女の子が好き過ぎたんですね(笑)。

――2曲目は『桜の園』。この曲も下山淳さんプロデュースでデモテープを録っていませんでしたっけ?

 下山さんたちとはもっとリズムのあるアレンジで録りました。それはそれでよかったんですけど、何かしっくりこないところがあって。これはそれ以前、まだ最初の事務所にいた1999年頃に、アルバム『新呼吸』でもキーボードを弾いてくれた五十嵐宏治くんと作ったデモテープの音源。当時よく使われていたデジタルレコーダーのA-DATで録音しました。

(当時のレコーディング風景。ギターはMartin O-18。)


インタビュー : 木村由理江