144. みんなで曲を作ることで自分は自由になれると再認識
――アルバム『新呼吸』の11曲目は『サンクチュアリ(SEIなるふたり)』です。こちらもソロ初のバンド・ユアーズでレコーディングした曲ですね。
リハーサルスタジオでチャカ・カーンの変わったコード進行の曲の話になり、それをネタにセッションしているうちに曲の原型ができた。それを僕が持ち帰って曲に仕上げ、みんなでセッションしながらアレンジしました。孤軍奮闘したり、プロデューサーと組んだり、FLYING KIDSとは違う曲作りを試してみてもなかなか見えてこなかったソロとしての方向性が、バンドのメンバーとスタジオで一緒にやっていたらクリアになって、誰かと一緒に曲を作ることで自分は自由になれるし、このやり方が向いているんだと、『首都高速』以上にこの曲で再確認しました。スタジオでセッションしたあとに、みんなで食べたり飲んだりしながら深夜まで音楽の話をするという当時の生活が、ひとつの突破口になった気がします。『首都高速』もそうでしたけど、『サンクチュアリ』も雲が晴れたような気持ちでレコーディングしていましたね。すごく気に入っている曲です 。
――歌詞の世界観はどこから?
友達が勧めてくれた『サンクチュアリ』(史村翔・原作、池上遼一・作画)という漫画があって、そのタイトルに惹かれて、“聖域=純粋さが保たれている場所”をテーマにラブソングを書きたいと思ったんです。二人きりだからこそよりピュアに、同時にエロティックにもなるというような、相反するものが交錯する世界を歌いたかったんですね。それまでにない観点で複雑なことを歌にできたという達成感がありました。
よく憶えているのは、〔かぎりなき微笑みは〕で始まる大サビを歌った時のこと。歌いながらあまりにも興奮し過ぎまして(苦笑)、「もうちょっとちゃんと歌おうかな」と言ったら若い波多野哲也くんと前田啓介くんが「俺たち世代にはこれがサイコーですっ!」と。それでそのまま残しました。みんないい仕事をしてくれていますけど、中でも五十嵐くんの煌めきのあるイントロや高揚感のあるホーンセクションは素晴らしいですね。
――アルバムを締めくくるのは『新呼吸』。これは詩の朗読です。
タイトルを決めたらどうしても詩が書きたくなったんですよ。メンバーもスタジオにはいましたけど、自分でギターとシンセで音源を作り、朗読しました。その夜のことはよく憶えています。恋愛関係とも受け取れるけど、僕からの僕と一緒に音楽を作ってくれる仲間たちや、僕の音楽を聴いてくれる人たちに対する呼びかけとも取れる・・。ソロになったからこその孤独感とかみんなと一緒に音楽を作れた喜びとかいろんな感情が込められていると思います。
――どんな音を背景に朗読するか、明確なイメージがあったんですね。
世紀末を迎えつつあったことで世の中には不穏な空気が色濃かったし、僕の心も少なからず混乱していましたから、混沌とした音にしたかったんだと思います。アルバムのギターの音が全体的に歪んでいるのも、その辺が影響している気がします。
――最後は“そうでしょ、そうだよね”というフレーズで終わります。余韻が深いです。
「そうだよ」と返されてその時は安心しても、時間が経てばまた確かめてみたくなる。そうやって繰り返し不安に苛まれる。結局、“自分”という部屋からーー牢獄と呼ぶ方がピッタリかもしれないけどーー人間は一生出られないんですよね。久しぶりにこの曲を聴いて、その両方を感じました。

(雑誌の対談で河相我聞さん、千原ジュニアさんと。)
インタビュー : 木村由理江

