123.新しいスタートを切るんだ!という意気込みに溢れた冒頭の3曲
――アルバム『Down to Earth』の幕開けは1分20秒の『NEW ADVENTURE PART2』です。オリジナル・ヴァージョンより野生味がありますね。
かっこいいですよね。この曲はアルバムの仕上げの段階で作ったんじゃないかな。サンプラーを使ったクールなグルーヴをどう扱うかも、今回のFLYING KIDSのチャレンジのポイントだよというのを宣言しようと、アルバムの冒頭にこの曲を置いたんだと思います。新しいFLYING KIDSの始まりにふさわしいものを作るぞ、という強い想いが溢れていますよね。このドラムは、オリジナル・ヴァージョンの中園さんのドラムではなく、サンプラーのドラムをループさせてるんじゃないかな。一方で三沢またろうさんを呼んで、パーカッションを生で録音してる。この頃のFLYING KIDSはこだわり方がすごいし、レコーディングも本当に贅沢でした。またろうさんのパーカッションが入ると、FLYING KIDSのグルーヴが数ランク上がるので、この頃はよくお願いしていました。またろうさんがいるだけでスタジオの雰囲気も明るくなるし。
これに『Love & Peanuts』、『君にシャラララ』と続くわけですが、久々に3曲通して聴いて、“新しいスタートを切るんだ!”という意気込みが満ち満ちていることに、ちょっとびっくりしました。まさかこのあとに解散するとは・・。びっくりですよね。
――4曲目の『この空、きっと晴れ』は浜崎さんの作詞・作曲です。伸びやかで真っ直ぐな歌声も印象的で、見晴らしのいい場所に立っているような気持ちよさがありますね。
こんなに爽やかな世界観はFLYING KIDS初でしたね。新境地を目指していたんでしょうし、プロデューサーである事務所の社長のアイディアも大きかったと思います。社長から出てくる曲やアレンジに関するいろんなイメージを、高野さんとメンバーが受け止めながら仕上げていました。僕はその辺にはあまり・・。この頃は、自分の想いは歌詞と曲、そして歌でも込めるわけだから、あとはみんなに任せようと思ってましたね。“アルバムはみんなで頑張って作る”ためには、そのスタンスでいることも大切かな、と。信頼できる高野さんもいてくれましたからね。ドラマ『智子と知子』(1997年7月~9月放映のTBS系ドラマ。脚本:遊川和彦。坊谷健司役)の撮影もありましたから、時間的な余裕もなかったんだと思います。
――アルトサックスがすごくいいですよね。
誰のアイディアだったのかな。この曲の世界観にすごくよくハマってますけど、僕自身は当時、あまり乗り気じゃなかった気がします。自分で作っておきながら「この曲はFLYING KIDSとして新しすぎるんじゃないか。本当にいいのか?」と考えていたことを今、思い出しました。
メロディは意図せず生まれてきたはずですけど、歌詞にはアニメ『新世紀エヴァンゲリオン』の最終回(1996年3月27日放映)の影響がある気がします。主人公が自問自答を繰り返すような、ちょっと自己啓発アニメを思わせる展開に本当に驚いて、「僕は一体誰?」ということを歌にしようとしたんだと思います。あまり深くない自問自答ですけどね(苦笑)。

(1998年2月12日の渋谷公会堂の時のもの。)
インタビュー : 木村由理江

