105. ソウルタッチのクリスマスソングが出来たことで心が少し楽に
――アルバム『HOME TOWN』の6曲目は『Christmas Lovers』です。
この曲のアイディアが浮かんだのは、中野のサウンドスカイスタジオでみんなで作業をしていた時でしたね。すぐに簡単に録音をして、あとから仕上げました。「クリスマスソングを作りたい」というモチベーションがありましたから、あっという間でした。メンバーもすごく気に入っていたし、FLYING KIDSらしいソウルタッチのクリスマスソングが出来たことで、心が少し楽になったのを憶えています。
アレンジにはベーシストの根岸孝旨さんに入ってもらいました。メンバーだけだとどうしても緊張したやりとりになったり煮詰まったりしてしまうんですが、作業は非常にスムーズでした。グルーヴに関しても、根岸さんが細かくチェックしてくれましたね。ベースにちょっとジェームス・ジェマーソンみたいなソウルっぽい雰囲気が出せたのも、根岸さんがいてくれたおかげです。
この曲ではいつもはギターで弾いているリフをハモンドオルガンで弾いています。FLYING KIDSで初めての試みで、何かしら新しいことができたのは嬉しかったですね。あと、根岸さんに指摘されて気がついたんですが、4/4拍子のBメロに一瞬、2/4拍子が挟まっているんですよ。自分ではまったく意識せずにそうなっていたというのが、自分でもおもしろかったです
――クリスマスソングを作りたかったということでしたが、気の滅入ることが続いた年だったからこそ楽しいクリスマスを過ごしてほしい、という想いでしょうか。
『とまどいの時を越えて』でやり切ることができなかった、こういう時だからこそエンターテインメントの極みにみなさんをお連れする方が役に立てるんじゃないか、という想いに決着をつけたい気持ちがあったのは確かですし、それは昇華できた気がします。
この曲には関西セルラーと缶コーヒーのキリンジャイブ、2社のタイアップがつきましたけど、どちらも楽曲が出来上がったあとに、レコード会社のスタッフが曲を持ってあちこち回ってプレゼンしてくれたんだと思います。ありがたいことですよね。
――そして7曲目は『森の中へ』。“TOME TOWN”というコンセプトでアルバムをまとめると決めたあと、仕上がっていた曲の隙間を埋めるように作った曲だと話していました。
街の中にあるのは繁華街と住宅地だけじゃないですよね。公園や森もあるでしょうから、それを入れよう、と。ただ僕は忙しかったので、恋人に会いに森へ行くというコンセプトで書いた歌詞だけをメンバーに渡して、他の仕事に出かけたはずです。メンバーだけで作った曲は、カントリーミュージックタッチの、ちょっと明るい曲でしたね。曲としてはよかったんですけど、僕は森の中で迷って方向を見失うような、ちょっと不穏な曲をイメージしていたので、その辺を伝えつつ作り直してもらいました。最初にメンバーだけで作ったヴァージョンでもよかったのかもしれないという気持ちがどこかに残っていましたけど、自分が最初に思い描いていた世界観をちゃんと表現できているこの曲でよかったんだな、と今、聴いて納得しました。

(「とまどいの時を越えて」の時のFLYING KIDS。)
インタビュー : 木村由理江