世直し対談
ゲスト
月花
 
福岡出身。SMパフォーマー/「人間開放委員会」会長。
かつて「菜の花」と呼ばれたBAR“  ”(←渋谷某店)のBOSSの傍ら、<人類開放計画>など数々のイヴェントを主催。
趣味は「快楽の追求(笑)」
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浜:今日はね、俺がインタビュアーみたいな形でいろいろ質問しながら、お話をしていこうかなと。
月:へい。いろいろ訊かれるんだ? ドキドキ(笑)。訊いて、訊いて。
浜:一応説明しますと、僕らはですね、10年くらい前に福岡で友人の紹介で知り合ったんですよね。たまたまイヴェンターに共通の知り合いがいて。その頃はまだSM嬢じゃなかったんだよね?
月:その時はもうやってたよ。あの頃はまだSMクラブっていうのがメジャーじゃなかったじゃない? 博多に2〜3軒だけあって、そこで働いてた。
浜:じゃ、SMっていうものに入っていくきっかけは随分と前の話になるの?
月:小さい時から、“生きる”とか“死ぬ”とかに凄い興味があって、動物の産卵と死ぬ瞬間を見るのが凄い好きだった。今でも覚えてるのはね、冬の寒い日に家の近くで猫が凍死しかかってたの。半分死んでて、腐臭がするくらい弱ってて…ノミが凄いんだよ。その猫からノミを取ってたのは覚えてる。で、15歳くらいの時に、博多のとあるビルに公衆トイレがあって、そこでワルい人たちがいろんなことをやってたんだけど、その辺でずっと遊んでたの。そこである日知り合った男の子に 、そういう性癖があったんだよね。無印良品とかで売ってるようなでっかいクリップあるじゃん? あれで目一杯つまんだりとかね、そういうのが好きなんだって話とかして。その子は結局、「SMなのかな?」みたいな。“SM”っていう単語として何となくぼんやり認識をしたのは、その人がきっかけ。その人と一緒にクラブへ行って、そのクラブでカップルをナンパして、「どうやってやるの?」って見せてもらったことある。
浜:じゃ、その人は教えられたみたいな形?
月:「それやってみたいなぁ」とか言って遊び半分でやる感じ。精神的にどうこうとか深い考えは余りなくて、子供の暴走なんだけどさ。で、ある日、朝まで呑んでて店を出た所でね、黒いスーツを着た身なりのいい30代くらいの男の人に声を掛けられたわけ。ナンパとは明らかに違うから何かと思ったら、実はその人、SMのクラブで働いてて、「女王様を探してるんです」って言うの。
浜:ピン!ときてるわけだ、向こうは。
月:で、「やったことないし、私、未成年ですから」って言ったら、「高校を卒業してお考えがあったらここに連絡をください」って名刺を貰って…。キャバクラやAVにスカウトされたりとか、ナンパされたりとかだったら「FUCKだよね!」って喋れるじゃない? それが、これは言っちゃいけない気がしてね。
浜:ある種、マジになっちゃったんだね。
月:どこかでやりたいと思ってたんだろうね。でも、「女王様やりたいんだけど、どうしたらいいと思う?」なんて話を誰にも相談できなくて。で、その話は置いといて連絡もしないで、また年月が経つんだよ。今度ね、18歳の時に新聞の三行広告でSMクラブの募集をたまたま見つけちゃうんだよ。最初は怖いもの見たさだったと思うんだ。結局、その時に名刺の人にも連絡したり、その三行広告の店に行ってみたりして。したらね、「女王様になれる!」って皆言うんだよね、その筋の人が。でも凄いの、スケジュールが。昼の12時オープンだから、11時には行って掃除したり、道具のメンテナンスとかしたりしながら、他の人のプレイを見て仕事を覚えるっていう。

●東京への壮絶な脱走劇

浜:それから東京に出てきたわけですよね。こっちへ出てくる意気込みって何だったの?
月:特に意気込みはなかったんだよね。それは凄い偶然で…事故なんだよ。私、世間的に言えばワルい子ちゃんじゃん? いろんな人と揉めたりもしたし、その挙げ句に大きい事件に2〜3個巻き込まれちゃったんだよね。
浜:脱出みたいなもの?
月:脱出と追放の間くらいだね。その時に一緒に住んでた男の人は、私が東京に出てくる時に捕まってるし。
浜:あらららら。
──ここで、その彼がなぜ指名手配に至ったかの話、当時の大事件の話が延々と続く──

浜:…書けねぇな、これは(笑)。要するに、拉致されて(笑)脱出するに至った、と。
月:でね(笑)、その部屋にあった小銭と洋服だけ拝借して脱出したら、線路が見えたの。線路を辿ったら駅が見えて。その駅が西川口駅だったの。
浜:わぉ。渋いとこだねぇ。
月:で、駅の路線図見たら東京駅があったから、「あ、ここは東京なんだ」と思って。
浜:え、それすらも判んなかったの?
月:うん。関東にいるんだなってことは何となく…標準語話してたし。でも東京なんて来たことないし、判んないでしょう? で、東京っていう私の少ない知識のなかで、“東京タワー”の前に“雷門”が出てきて。「見とくか!」って思って(笑)浅草寺まで行ったの。でもね、そこで鳩にエサをやりながら考えたの。このまま逃げ続けても小銭しか持ってないし、拝借してきた服は夏物なんだけど、その時は秋なんだよ、どう考えても(笑)。サンダルはちぐはぐだし、なんか血とか出てるし。道を訊く人が私を見て引いてるのが判るのね(笑)。これは精神衛生上大変良くないと思って、浅草署に自首しました(笑)。
浜:“自首”って何? 脱走する時に暴れたの?
月:椅子で殴ったりした。
浜:わぉ。
月:見張りがずっと付いてて、それまでも毎日殴られてたからね。でもね、自首して事情を話しても、相手には頭おかしい女にしか見えないんだよね。それで、警察も保護のしようもなければ、今すぐ告訴もできないからって、「今すぐ浅草署から西川口署に行って下さい」とか言われて。でも西川口署も何もしてくれなくて。それでまた浅草まで戻って、こりゃ浅草署でゴネるしかないなと思ったわけ。「これ以上“保護しろ!”とか“博多まで帰る交通費出せ!”とか言わないから、とりあえず風俗屋どっか紹介しろよ!」って言ったの。もう日も暮れてるし、何も食べてないし、泊まる宿もないから。で、連れて行かれたのが吉原だったの(笑)。
浜:あ、そう(笑)。
月:結局、吉原の交番で写真撮られて、指紋採られて、吉原でそのまま野放しにされて。で、今夜中に客を付けてくれる店で働こうと当たったの。
浜:そしたら?
月:吉原のソープ街にね、たまたま博多出身の社長がやってる店があった。いろいろ話したら「事情は判らないけど、まぁ入れ」って言ってくれてね。で、その日の夜に社長の友達が店に来るってことになってて、「その男がお前を2時間買うっていうなら、そのギャランティをお前に払う」って言われたの。それが交渉成立してね。そのオッチャンに寿司をご馳走して貰って、宿代も確保できて。後日そのお金で外科から眼科からあらゆる病院にも行って…。恩があるから、その社長の店で当分働いた。そのあと九州で裁判があるから帰って、親も心配してるだろうなと思って連絡入れたら、逆に親から警察に突き出されまして(笑)。で、まぁいろいろあって、また東京に出てきたの。ウィークリー・マンション借りてね。
浜:…と、まぁ、壮絶な過去なんですけども、結局東京へ来て落ち着いて。SM嬢としては、今の前の店でも働いてたよね。
月:うん。SMクラブでもショーパブでも働いてたし。普通のバイトとかもしてたよ。でもまた、たまたまある日、SMのショーパブのスタッフ募集を目にしたの。私くらいの力量じゃ東京なんかで絶対通用しないだろうと思ってたら、逆に私が博多で働いてた店は凄いディープだったらしくて、東京に来たら「こんなのできる子いないよ!」って話になっちゃったの(笑)。SMクラブにいた頃は、自分が本当にやりたいと思ってやっていたことだから、ギャラの保障がなくても朝から晩までやってた。「こんなふうになれたらいいな」とか「できるようになりたいな」っていう目標みたいなものが私にはあって。なりたいから頑張ったんだろうし。
浜:その仕事に就けるかって時に、“予感”がするかどうかって結構重要だと思うんだよね。僕自身も音楽をやろうという時に、理由もなく「これできるだろうな」って確信がやる前からあったんですよ。だから向いてたんだろうなとは思う。

●今一番足りないのは“信念を持てるかどうか”

浜:いつだか話をした時に、世の中に対する嘆きがあったじゃないですか。その話を改めてしたいんだけど。今の風俗産業が醸し出している気分というものと、月花が元々考えている性の在り方とのギャップが凄いあるという…。
月:ギャップは凄いあるよ。想像力の欠如の話でしょ? 性は与えられるものじゃなくて、自分から求めるものじゃない? お金をこれだけ払えば楽しめるだろうっていう安易さがあるけれど、性ってお金に換えられるものではないと思う。
浜:もっと動物的というか本能だと思うし、それがどこかでマニュアル化してる感じがするよね。自分自身の衝動みたいなものから目をそらしているというか。
月:あと、風俗で働く女の子たちって、働く理由が「お金になるから」ってよく言うでしょ? それはよく判るよ。でもね、「それが天職だと思って好きでやってる子がどれだけいるんだろう?」って思うの。好きでやってるんだったら、「私はソープ嬢だ!」って胸張ってる子がもっといるはずでしょ? 例えば、彼氏に自分の仕事のことが言えない子って凄く多いんだけど、「自分の生業を偽る必要がどこにある?」って思う。それと、「所詮は水商売だろ?」って言葉あるでしょ? それって職業として凄いポリシーを持って働いている人たちに対して失礼だし、そんな言われ方を絶対にしてほしくない。私は吉原で働いていたことも堂々と言えるしね。
浜:重要なことだよね。「お前にできんのか!?」っていうさ。やっぱりその道のプロって感動的ですよね。
月:例えば、男の人を射精させる仕事をやろうと思ったら、「私にかなう奴はいない!」くらいに思わないと。「どんなことして私が金を貰ってるか、アンタ判ってるか!?」ってOLに言えるくらいになってほしいのね。
浜:まぁ、お互いに尊敬の念を持てばいいと思うんですよ。OLだって一生懸命仕事してるわけだし。
月:「でも私はコピー取れないよ」でフェアじゃん。
浜:そうそうそうそう。フェアでいいんだよね。
月:あとね、「風俗店勤務の女性に部屋は貸せない」っていう物件も、絶対におかしいと思う。「プライド持って風俗やってる奴がそう簡単にバックレるか!」って話なんだよね。
浜:逆にお金持ってるしね。
月:確実に稼いでるし、その店を辞めたからってその子には絶対食い扶持あるもん。
浜:確かに、お金が支配しすぎてるよね。今の日本の状態って特にそうだと思うんだけど、お金を持ってることがまず先にあって、それからが自分のやりたいこと、やれることっていう順だよね。だけど自分が本当にやりたいことっていうのは、自分の生き様みたいなものと向き合わなきゃいけないじゃないですか。そういうのにガチガチ向き合って突破していくじゃない? で、世の中っていうフィールドで己を認めさせるような状態まで努力していく。その結果としてお金が生まれる。そしたら別にさ、悩みはないよね。
月:お金が生まれるに越したことはないけど、生まれない場合もあるよね。私だってキツイ時がある。でもキツイからといって、例えば私が片手間に別の風俗屋で仕事をしながらこの店の生計を立てたとするでしょ? それは違うでしょ。本当にやりたいことだったらいいけどね。
浜:僕は政治番組とか好きでよく見るんだけど、政治の世界でもそうだし、企業でも社会の在り方でも今一番欠落してるのは、“信念を持てるかどうか”ってことだと思うんだ。信念ありきでいろんなことを始めて、自分以外の人たちと結び合えるポイントが生まれた瞬間にお金が発生したり、しなかったりする。それが人間の基本的な在り方のひとつだと思うんだけど、そこで悩むっていうのは、自分の掲げた目標に到達できないもどかしさでしょう? でも、自分がやっていること自体には意外と悩まないよね。だから幸せだと僕は思うんですよ、お互いに。職種は違えど、似たような感じでやってると思うんで。

●“開放”という言葉は浜崎貴司に教わった

浜:月花は今、イヴェントを企画していろいろやってるじゃないですか。お店は、好きな人たちがお互い了承のもとに成り立っていて、ある種閉じられてる部分がちょっとあるでしょ? それに対してイヴェントっていうのは、お金を払えば誰でも参加できる開かれたところがあるわけで、そういうところに突入してみようっていう感じ?
月:ウチの店は男性がチャージ2000円、女性が1000円で1ドリンク付き、追加オーダーは全部500円なの。何でこういうスタイルでやっているかっていうと、従来の風俗産業の在り方が気に食わなかったんだよ。他の店だと、男性は2万円くらい払うって聞いたんだよね。何でそんなに敷居が高いのかが判らないの。ウチはその10分の1でいいと思った。単純に店で皆が和めばいいじゃんって思う。だから、店はある程度の良識と人に対する最低限のマナーが守れれば誰でも楽しめる場所ってことにして、イヴェントのほうはもっとコアなファンのためのコアなイヴェントを作り出せばいいのかな、って。このイヴェントにはこういう人たちに来て欲しいという、的確に層を狙ったイヴェントが作れればいいな、って思ってる。
浜:自分の想いの塊をきちんとぶつけていきたい、みたいな?
月:そうそう。イヴェントはかなりメッセージの要素が強いと思う。
浜:そう、僕が思ったのは、メッセージっていう感覚が凄く強いんじゃないかってことなんだよ。自分が核にいて、大人数に向けてバーッと振りまいていくような開かれた部分がイヴェントにはあると思うんですよ。具体的な排泄とか、性欲を満たしていくっていうことよりは、言葉とかメッセージがメインなんじゃないかって。
月:まさしくそういうこと。開放(笑)。“開放”っていう言葉は、浜崎貴司が私に与えたものなんだよ(笑)。…私さ、「幸せであるように」が好きなんだけど、あの曲の歌詞でどこが一番好き?
浜:俺? …<ママも死んで>っていうくだりかな。
月:うん。私もそうなんだけど、あと<君の涙をお皿に集めて>ってとこあるじゃん? 人と人との関係で人が求めるものってそういうところだったりするじゃん?
浜:うんうん。
月:私のお師匠さんが言った言葉で、「人は皆違う形で形成されている」っていうのがあって。例えば、判りやすい形に直したとしたら、私が丸であなたが三角だとする。丸のなかに三角は入らないんだよ。丸と三角が同じ容積であっても、どこかが出っ張る。人と人との関係もそうでしょ? 誰かを自分の手中に収めて完全にコントロールするなんてことは絶対に不可能で、自分の把握できない意識っていうのが必ずあったりするわけでしょう? でもそれって殻に入ってるからであって、周りの形がなければ関係ない。
浜:そうだね。
月:だから<ママも死んで>も<子供も生まれて>も、何も変わらなかったりするわけじゃん。その変わらないものって、形がないものは変わらないし、形があるものは変わっていくじゃない?
浜:永遠性みたいなものに触れてみたいってこと? 普遍的なものっていうか。
月:そうも言うのかもしれないけど、可能性が好きなの。
浜:いろんなことになっていける可能性ですよね?
月:そう。例えば「私は身長がこれくらいしかないからあの高さには届かない」というのは、背が低いという前提を私が知らなければ不可能だなんて思い付かないと思うの。
浜:自由でありたい、ってことだよね。
月:そう。その現実から目を背けるわけじゃなくて、その現実に縛られたくないの。そんなことを考えている時、FLYING KIDSのライヴをある日観に行ったら、この人が「開放人間バンザ〜イ!」って叫んでたの(笑)。それで何年か経って、自分がやるイヴェントのタイトルを『人間開放計画』って命名したの。自分がミラ狂美(月花の悪友であり天才SMパフォーマー)とやるイヴェントは、とにかくめちゃくちゃな感じにしたかった。男も女も年寄りも若いのも関係なく、人間は皆エッチでそれが普通なんだから、3歳の子供が100人くらいでプールに入ってキャッキャッって遊んでるようなノリでエロ・イヴェントをやれないかって。それが『人間開放計画』。エロのたがとか人間の固定観念とか、「セックスは正常位でやるのが普通です」みたいな通念をブッ壊せたらいいねってミラ狂美と話した時に、その『人間開放計画』っていうネーミングが凄くしっくりきて。
浜:多分、発している本人よりもいい意味で捉えてると思いますが(笑)。

●“寂しんぼう”が表現に向かう

月:ゲスト多分、今ある状況は私が一番求めてたものだと思うのよ。自分が勝手にコンプレックスやら被害妄想を抱いたり、自分には居場所がないとか、自分が本当のことを言ったら相手に否定されるんじゃないかとか、そういう恐れを持ったことがあるから考えたことだと思う。“皆が恐れを持っている”って前提なの。水商売にしても風俗にしてもそうだけど、次に誰がドアを開けて入ってくるか判らない。風俗なんかは特にそうだけど、次の瞬間に私は誰と2人きりになるか判らないし、どんな人間なのかも判らない。怖いよ。けど、その人間を満足させなければ私のギャランティは発生しないという意識のもとに今までやってきたから。その時に、人間はどこかに必ず恐れや脆さがあるって確信したの。例えばマゾヒストの人に「足で踏んで下さい」って言われたとするじゃん? それに対して私は必ず理由を訊くのね。「あなたは何も悪いことをしていないのに、私に踏まれる理由がないだろう?」って。「じゃあ私を怒らせろ」って言うの(笑)。
浜:リアルに踏みたいわけだ(笑)。
月:衝動って絶対に理由があると思わない? 例えばさ、いろんな風俗に行って、いろんなサービスを受けた結果、「アナル・セックスは気持ちいい」ってところに行き着いてて、アナル・セックスだけを求めて風俗街をさまよう人もたくさんいると思うの。でも、「どうしてアナル・セックスは気持ちいいのか?」っていう原点に立ち返って接してくれないと、その人の快楽ってそこ止まりなんだよね。だって、その人はその時点で想像力を欠いちゃってるじゃん? マニュアルにハマっていること自体に気づいてないわけだから。だから、「どうしてそういうふうに思ったのか?」「そういうふうにするとどこが気持ちよくて、どういう気分になるのか?」「そういう気分にどうしてなりたいのか?」「最初にその行為を自分に教えたのは誰だったのか?」とか、そういうのを必ず少しずつ訊くようにしてるの。そういう原点に立ち返る話を訊いてると、たまたまこっちに来ちゃってるけど、あっちに行った可能性もあったのかもしれない…っていうのが無限に見えてくるの。だから、私がそれをやることは簡単だけど、相手の話を聞いた上で、その人に最適な「こういうやり方もあるんだよ」っていう方法を試してみないか訊いてみる。
浜:なるほど。それは想像力だね。
月:「ヤだよ、やったことないから」って言われたら、「大丈夫、私はプロだから」って答えるの。「悪いようにはしないから」って。で、「もし気持ちよくなかったらお金返すよ」って約束する。それは絶対言う。
浜:凄いね。真剣だね。ライヴだよね、それは。僕で言えば、コンサートやっててもね、演奏してるだけではないじゃないですか。そこの空気があって、場所があって、時間があって、その日の気分があって、来てる人たちの熱気みたいなのもある。いろんなものが混ざり合ってライヴという作品が出来上がっていくんだけど、予定調和に「ここでステップ踏んで」とか「ここでギター・ソロ弾いて」とか決まっちゃってるような形でやるのはよろしくないですよね、僕の場合は特に。
月:よろしくないでしょう?
浜:やっぱりアクシデントっていうか、絡み合いっていうんですかね、そういうのが欲しい。ずっと話を聞いてると、僕が音楽で追求してること…追求してるっていうか、たまたまそういうことが気になってるなってことの連続で、積み上がってきてるのがあるんだけど…それがやっぱりコミュニケーションっていうことなんだよね。対話していくっていうか、繋がり合うっていうか。それを僕は音楽でやってるし、君はこういうSMを通してやってるわけだけど、どちらも互いにものを作っていく、表現していくってことに変わりはないよね。人間の心の謎とか、絡み合う身体とか、そういうものを追求していく意味においては似てるなぁって凄く思う。
月:そうだね。あのね、あらゆる行為って同じだと思うのね。言葉とか認識でカテゴリーしてるのは、個人だから。
浜:お蕎麦屋さんと話してるとさ、「毎日蕎麦が違うんですよ」って言うわけ。その日の湿度とか粉の質とかが凄く関係するらしいの。それで「今日は巧くいった」とか「今日は難しいな」とかって毎日蕎麦と向き合ってる。そういうのとも同じだと思うしさ。
月:同じ、同じ。
浜:そういうのを追いかけていくとさ、自然というか宇宙とか話がデカくなっちゃうけど、法則というものが凄く入り乱れているよね。めちゃめちゃカオス状態みたいな所で暮らしてるわけだから…。
月:自分の存在確認だったりもするしさ。
浜:そうだね。
月:その混沌としたなかで自分の不安っていうのがあって、それに対して自分に賛同してくれるもの、理解者が欲しいっていう意識がある。結局はさ、人が持ってる“寂しい”とかの感情とリンクしてるんだと思う。
浜:そうなんだよな。だから、寂しくないようにしたいんだよね、単純にね。
月:そうそう。だって蕎麦屋でもそうだと思うけど、何かを生もうとすることってメッセージなわけでしょ? 自分が意図してることを誰かに知って欲しくてやるのが表現でしょ? だから本当に一緒だよね、レストランでも何でも。
浜:とにかくやっぱり、寂しんぼうじゃないとものは作れないし、寂しんぼうなのがどっかでエネルギーになるんだよね。押し付けがましくなっちゃうけど、想像力が何を結末として目標としているかというと、寂しくならないようにするという…(笑)。寂しんぼうの皆さんは是非ラッキーだと思って、そこから何かを生み出してくれるといいよね。
ゲスト
(2002年3月13日/渋谷・“かつて「菜の花」と呼ばれたBAR”にて)

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